二冠と連覇。目標は潰えた後に両者が相まみえたのは偶然だろうか。
10月14日に青森で開催された国民スポーツ大会(以下、国スポ)少年男子男子バレー3位決定戦は、大阪の清風と熊本の鎮西が対決。清風は初優勝した今夏のインターハイに続いての二冠をかけて臨んだ大会だったが、準決勝で駿台学園を主とする東京に敗れた。昨年はインターハイと国スポを制した鎮西も、準決勝では川内商工が大半を占める鹿児島に敗れた。
前日には3セットマッチの準々決勝と5セットマッチの準決勝を戦った翌日だ。しかも準決勝からの時間は24時間にも及ばずリカバリーの時間もない。心身ともに疲労が蓄積した、ベストとは言い難い状況ではあったが、インターハイ以来の再戦でもある。
夏はフルセットで勝利した清風が制するのか。僅差で敗れた鎮西がリベンジを果たすのか。注目の一戦は、3対0で清風が勝利した。
常に複数枚の攻撃を仕掛ける清風に対し、鎮西のエースとして攻撃の大半を担う、一ノ瀬漣の身体は悲鳴を上げていた。
「身体のコンディションがずっと上がらなくて、試合後もずっとケアをしていたんですけど(試合当日の)今朝は今まで経験したことがないぐらい状態がよくなかった。それでも決めきれなかったのは自分の気持ちや技術の課題もあると思うので、コンディション面も含めていい状態で臨めるように持って行く。それも春高に向けた課題だと改めて実感しました」
現役高校生ながら今年4月に発表された日本代表登録選手に名を連ね、B代表の東京、薩摩川内での合宿や海外遠征にも帯同した。同世代との対戦では味わうことのない高さやパワーに挑む、1人の選手としては得難い経験だったが、そこに高校での過密日程が重なれば当然疲労の度合いは計り知れない。
それでも責任の矢印を他社に向けることなく、自分で受け止める。どれほどコンディションが悪くても、やはり一ノ瀬はチームの柱だった。「決めきれなかった」と言う通り、3位決定戦ではジャンプ力もインターハイとは比べ物にならず、ブロックにかかる場面も多かったが、それでも要所での決定力は圧巻だった。
二冠を達成した昨季、11月には畑野久雄監督が急逝した。期待と重圧。さまざまなプレッシャーを抱えながら臨んだ春高では、2回戦の愛工大名電戦にフルセット勝ちを収めた直後のミックスゾーンで涙する姿もあり、ダブルヘッダーで行われた準々決勝で東山(京都)に敗れると、責任を一身に背負った。
世代を代表するエースであり、すでに全国優勝の経験はあるが春高では未だセンターコートにたどり着けず、今季は「三冠」ではなく「春高優勝」を目標にしてきたのも、決意の表れでもある。そして国スポの敗戦が、また新たな火をつけるきっかけになった。
「自分も含めて、1人ひとりが『このままでは勝てない』と感じたと思うので、1日1日の練習、練習以外で自分たちができること、やるべきことに対してももっと意識を高く持って、全員がもっと成長して春高に臨みたいです」
春高で勝つために何が足りないか。ここからさらに成長するためにどうしたらいいのか。夏の覇者、清風もまさに同じ壁と直面している。
昨年から主軸を担った選手たちが3年生になり、3枚では収まらず4枚、やろうと思えば5枚攻撃もできる攻撃力と、ブロックとレシーブが連携したトータルディフェンス。インターハイで見せたバレーボールの質や戦術レベル、個々の技術力に驚かされた人も少なくないはずだ。
高い能力とバレーIQを持つ選手が揃い、さらにそこに「勝者」となった自信も加わる。国スポではさらに強くなった清風の姿を見せるのではないか――。
そんな期待は高まるばかりだったが、実際は違う。苦しんでいた。準々決勝の福岡戦もフルセットの末に勝利したが、リードした状況から些細な連携ミスをきっかけに崩れ、ヒヤリとする場面が何度もあった。駿台学園を軸にした東京との準決勝では、まさにその不安要素が露呈し、ストレート負け。1つひとつの技術面だけでなく、山口誠監督も「責任の矛先、矢印が自分ではなく周りに向いている。それではチームとして1つになって勝てるわけがない」と敗因を述べた。監督だけでなく、大会前から予兆があった、と明かすのはアウトサイドヒッターの伊藤匠太朗(3年)だ。
「インターハイで優勝して、ちょっと甘くなったり、気が緩んでいたところはありました。先生方からはそういう姿勢は絶対につながってしまうから『このままじゃ国体は負けるぞ』と言われ続けてきたのに、結果がこうなった。正直、何も言えへんかな、と思うし、春高では自分たちがチャレンジャーとして臨んで、ずっと負けていた駿台にやっとリベンジが果たせたけれど、今回は逆のことをやられた。僕らに勝った時、駿台の選手が泣いて喜んでいるのを見た時に、それぐらいの気持ちで戦っていたんだ、と思い知らされた。気持ちの違いが、結果にもつながったんだと思いました」
このまま終わるのか。それともこの敗戦を機に変わるのか。ここからが春高へ向けた再スタートとするために、準決勝を終えた後、選手同士でミーティングをした。互いの不満や抱えていた思いをぶつけ合う。何がダメか、改めて確認する機会になった、と伊藤が続ける。
「全国はもちろんですけど、大阪でもすべてのチームが『絶対清風を倒すぞ』と望んでくる。そこで王者感を出して『俺ら勝てるぞ』みたいな感じでやっていたら、絶対どっかで取りこぼす。どんな時でも、自分たちのやるべきことを変えずに、常にチャレンジャーでいかないといけないと思ったし、今回負けて、今のままやってたらもうアカン、ダメってことがもう分かったので、いかにチームとして『繋がり』を持てるか。同じ目標に向かって、チームが一つになれるように。そうしないと、春高ではもっと悪い結果になってしまう可能性もあると思うので、ここからもう一回、必死でやります」
3位決定戦を終えた直後、選手たちの輪の中で、山口監督は涙しながら「これだけ能力があるのに、チームとして戦えないことが不甲斐ない」と語りかけた。その言葉が響いた、そう言うのは2年生エースの西村海司だ。
「強さがあるのに勝ちきれないのが悔しい、と言われて胸に響きました。何回も何回も同じことを言われ続けてきて、ここでやらなかったら本当に終わりなので。やるだけだと思ってます」
あまり満足いくパフォーマンスができずに苦い顔を浮かべる選手が多かった中、国スポで気を吐いたのが1年生のアウトサイドヒッター田中杏侍だ。苦しい状況からもハイセットを打ち切る姿や、ブロックを利用して決める逞しさを見せた。
「雰囲気が重かったので、とにかく自分は決めるだけだと思っていました。山口先生から『この悔しさを絶対につなげろ』と言われてその通りだと思ったし、やっぱり夏勝って調子に乗っていたと思うのも事実だから、ほんとここから。沈んでいても、うまくいかない時でも自分だけは練習から必死でやろう、ぐらいの気持ちを持って、春高でも暴れます」
あの悔しさがあったから――。
最後に笑えるその日まで。負けてからどうするか。ここからが、真の王者となるための始まりだ。




