[写真]=Photoraid

 左手から繰り出される強烈なジャンプサーブに豪快なスパイク、そして感情むき出しの咆哮。日本代表・西田有志のプレーには、会場のボルテージを上げる爆発力がある。高校3年で当時のVリーグで鮮烈な活躍を見せると、直ぐに日本代表入り。世界トップクラスのプレーヤーと成長していき、東京五輪やパリ五輪でチームの躍進を引っ張った。186cmとバレーでは小柄な部類に入る西田は、人一倍高くジャンプする必要がある。同時にそれだけ足に負担が掛かってきた。新リーグSVリーグで首位争いをする大阪ブルテオンでも、西田は縦横無尽の活躍でチームをけん引する。

 その西田の足を2021年からサポートしているのが、日本シグマックス株式会社が展開するZAMST(ザムスト)のスポーツインソール「Footcraft(フットクラフト)」。ジャンプの動作時に足裏にかかる衝撃を和らげ、プレーの質を向上させてくれる。そのフットクラフトシリーズの製品ラインナップに今年7月から加わっているのが、足裏の形状に合わせて成形するオーダーメイドインソール「Footcraft CUSTOM(フットクラフトカスタム)」だ。展開しているスポーツ店に行けば、足型を分析して自分に合ったインソールを作ることができる。今回ザムストのスタッフの協力のもと、自らの足に合わせて成形したインソールを新たに手にした西田に、インソールのこだわり、体のケア、自身のプレーや思いなどを聞いた。

扁平足をインソールによってサポートし、プレーを向上

ーー西田選手がシューズのインソールの重要性について感じ始めたのはいつ頃からですか?

西田 僕の両足は先天性で舟状骨(しゅうじょうこつ)が二分していて、その部分が他の箇所にも影響して痛みが出ることがありました。舟状骨を痛めたのが中学3年の時で、サポーターで(足底に)アーチを作ってみたのですが違和感しかなかったです。

動くとサポーターがずれていくし全然合わなかったんですが、高校の時にインソールをこだわってみると使用感が良く、以降こだわっていきました。現在はザムストが出しているものを使っています。Vリーグで初めて優勝を経験した時(2019―2020シーズン、当時はジェイテクトSTINGSに所属)もザムストのインソールを使っていました。

ーー西田選手の足裏はどういった特徴なのでしょうか?

西田 右は普通ですが、左足のアーチが扁平足に近いような感じで、足首が内側に入ってしまい、アーチが機能しない状態になっていました。その状態が続くと、足を痛めたりとケガのきっかけになる。だからこそ常にインソールにはすごくこだわっています。

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ーーどういうインソールが合いますか?

西田 レディメイドインソール(既製品)や、靴を買った時に入っているインソールは薄いので、足の疲労がすごく残りやすい。インソールが厚ければ良いというわけではありませんが、サポート力があってクッション性も感じられるものが自分にとっては重要です。そういうインソールを使うことで、足の疲労もそうですし、歩き方など全てが変わります。自分がパフォーマンスを発揮するためには絶対に必要なものですね。

ーーインソールを選ぶ上でこだわりはありますか?

西田 一番はアーチを作ることが非常に重要で、アーチが低下しない様に自分のアーチの形状に合わせて山を作ることによってサポートし足が普通の形になる(土踏まずができている状態)。僕の足裏はペタっとなっているので、ここをちょっと上げることによって通常の形にもってこれる様にするというのはこだわっています。もう1つは、クッションを(足で)感じられるかというのを重要にしています。理由として、ジャンプの着地時に衝撃を強く受けるので、少しでも和らげられるようにという考えがあります。

バレーに限らず他のスポーツの競技者にとっても、インソールにこだわることで足裏の強化になると思います。インソールにこだわるこだわらないで、(パフォーマンスに)違いが必ず出るとは思っています。

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オーダーメイドによって、よりケガの予防にも繋がる

ーー今回ザムストのオーダーメイドインソール「Footcraft CUSTOM(フットクラフトカスタム)」を作りました。レディメイドインソールよりオーダーメイドインソールの方がやはり合いますか?

西田 レディメイドインソールにも良い物はもちろんあるにしても、自分の場合は左右差もあるのでどこかでフィット感に欠けるというか足裏のところでうまく当たっていませんでした。よりフィット感を向上させるのにオーダーメイドというのは一番いいのかなと思っています。オーダーメイドで作ることによって、自分の足の裏のアーチを常に支えてもらえますし。

ーー以前足裏の痛みがひどかった時は練習や試合の後に疲れが取れなかったり痛みが残ったりしたのでしょうか?

西田 ケガに繋がった時はやはり違和感は少しはあったもののケアを常にしていました。でも結局試合はもちろん、練習の時でもつい力が出てしまいます。その時の力の出し具合で、一気にそれ(足裏の痛み)がケガになってしまうのか、痛いままで終わるのかのどちらかになることが僕には多いです。試合になって出る力の方が強いと思いますし、それがケガにつながりやすいのかなとは思っています。

ーーインタビュー前には、サンダルを履かれていましたけど、日常生活の中でもそういう取り組みをされているのですか?普段の履き物であったり。

西田 そうですね。もう薄いのは履けないですね。だから、サンダルもリカバリーサンダルですし、外を出歩いたりチームで移動する時用の靴の中にもインソールを入れています。

ーーこれまでリーグ戦を長期離脱する様な足のケガの経験は?

西田 足に関してはほとんどないですね。それこそ日本代表で東京オリンピックの前に紅白戦で大きな捻挫したぐらい。

ーー大きなケガが少ないというのは普段のケアの賜物。

西田 ケアに対する意識は常にあります。練習が終わってからのアイシング、交代浴、ストレッチもそうですし、ケアはすごくこだわっています。

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ーー今回オーダーメイドインソールを取り入れたことによって、ケガの抑止、予防にもなりますけど、他にも瞬発力に対する効果があったりしますか?

西田 あると思います。レディメイドインソールは僕が(バレーボールの動作を)やるとシューズの中で足が動く。そして、物によっては薄くて柔らかいからインソールが耐えられなくなる。インソールで負荷がかかっている部分がすり減って無くなるようなこともすぐだった。ザムストのインソールにしてからは、そのストレスは無くなりました。(動作の)始めの一歩が重要だと思っているので、それについてきてくれてズレないインソールが自分には良いと思います。

ーー今使っているインソールは、素材も合っていますか?

西田 そうですね。衝撃吸収性に優れた素材が使われているのでジャンプの着地時の衝撃を緩和してくれるのは、僕のプレースタイルに合っていると思います。アーチも支えられてバランスが良くなり体の使い方も良くなってきていきます。そういうところによって(ケガの抑止やプレーの質向上に)繋がっているかなと思います。

ーー西田選手の様なプロバレーボーラーだけじゃなく、中学、高校の部活生でもインソールにこだわることも考えた方がいいですか?

西田 そう思います。でも、お金がどうしてもかかってくるので一概には言えないんですけども、インソールを使うことで疲れにくくなるのは、ポイントだと思います。これがどうだというのは、インソールを変えてからじゃないと気づかないことがあると思う。そういう取り組みをしていくことで、段々と意識や行動力も上がっていくことにも繋がっていきます。

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トレーニング、ケア、道具、こだわるのは少しでも長く現役で続けるため

ーー西田選手のスパイクやブロックする時のジャンプの質が年々上がっている印象があるのですが、何か取り組んでいるのでしょうか。

西田 個人でジャンプコーチをつけていてトレーニングをしてもらっています。自分の中で、これだっていうジャンプが少しずつ増えてきたのが現状です。正しい飛び方というか、自分に合った飛び方を見つける様に取り組んでいます。それもやっぱりインソールが合ってからじゃないといけません。違和感を持ってしまうとどうしてもそっちに意識がいってしまう。だからこそ、まずインソールからというのが、今の(良い)プレーにも繋がっているかなとは思います。

ーーこれまでの発言を聞いていると、トレーニング、ケア、道具に対するこだわりを凄く感じます。また、パリオリンピックの後には、代表活動を一度休んで体の動きとかを見直したいという趣旨の発言をされていました。なぜそういう意識を持っているのでしょうか?

西田 ケアであったりこだわりを自分で思ってはいても、実際にそこまでやれる人はなかなかいません。でも僕が一番に思っていることは、現役を長く続けたいというところ。そして、常に自分が納得のいくシーズンにしたい。

まず自分が決めたことに対して、やりたいじゃなくてやると決めたらやるし、やらないんだったらやらない。選択肢はこの2つしかない。やると決めたら、しっかりストレッチし、そのストレッチがどういう効果があるのかとか理解を深めて取り組むことで、さらに自分の中の考えが変わっていく。バレーのプレーでも一緒。このプレーがどういった意味を持っているのか、これがこういうシチュエーションだったから、自分はどういうポジショニングをしたのか、探求することでわかってくる。やらないことには何もわかりません。

いつまでも現役でプレーし続けるのはさすがに無理ですけど、堺(日本製鉄堺ブレイザーズ)でプレーしている松本さん(松本慶彦、今シーズン中に44歳)みたいに、自分があそこまでやれるのかというとまだ全然イメージもついてはいませんが、あそこまで続けるために、松本さん以上に良いプレーをするために自己投資をします。

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ーー今の話を聞いていると、西田選手はバレーボールそのものが根本的に好きなんだなと感じました。

西田 はい、こうやってありがたいことに職としてやれている。バレーボールを始めた時には考えられてなかった。それを自分の職にして、それこそ(プロ選手に転向して)3年ぐらいまでは全然稼げていなかった。自分が欲しいと思った物も買えない生活ではあった。でも、やっぱり好きだから、いや、世界を倒したいからというのもあったのが、今ものすごく生きている。

ーーそういう考え方があるから、体作りであったり、道具へのこだわりとかが生まれていったのですね。

西田 そうですね。そこをやることによって自分のプレーが良くなり評価されます。結果が第一と思いますし、結果を出すことで認められることはもちろん大事。一方で自分がそれまでにやってきた取り組みや努力は、自分からこうやっていますと言うのではなくて、それを見ている人が必ずいる。評価が難しいとは思うけど、自分は誰よりも努力し続けていきます。

ーー誰よりも得点能力を求められるオポジットというポジションだからというのもありますか?

西田 この身長でオポジットとしては圧倒的に低い。(世界の強豪国の中では)絶対最小でしょう。だからこそ、他の人よりやらないといけないこともたくさんあります。余計にそこを意識するし、でも小さいから・・・ではなくプラスに考えている部分は多い。大きいのにこういうプレーはできないの、これはできるのにあれはできないんだ、もちろん相手には言わないですけど、こういった考えを持ってやっています。僕も身長が大きい人たちができることはできないし、身長の低い自分にしかできないこともある。こうやってバレーボールを考えて結果を出していくことに必死になることで、もっと生きていけるし、先にもつながる考えにはなると思います。