セッター関菜々巳(ブスト・アルシーツィオ)の表情が明るい。
6月4日に開幕したネーションズリーグの第1週カナダ大会、第2週香港大会を見ていてそれが印象的だった。笑顔が多いだけでなく、悔しい場面では悔しさを思い切り表情と体で表す。感情豊かに、イキイキとバレーを楽しんでいる様子が伝わってきた。
「“楽しそうだね”って本当によく言われるんですけど、シンプルに楽しいです」
関は吹っ切れたような清々しい笑顔で言った。

きっかけは、初めてイタリアで過ごした昨シーズン(2024-25シーズン)だった。
関は昨年、東レアローズ滋賀からセリエAのコネリアーノに移籍した。コネリアーノは、ブラジル代表エースのガブリエラ・ギマラエスや、ポーランド代表セッターのヨアンナ・ボロシュ、イタリア代表リベロのモニカ・デジェンナーロなど世界トップ選手を揃える強豪。昨シーズンは世界クラブ選手権、コッパ・イタリア、セリエA、ヨーロッパチャンピオンズリーグでタイトルを総なめにした。その中で関の出場機会は限られたが、得たものは大きかったという。
「イモコでは、本当にみんなが楽しそうで。それは練習でも、試合でも。しかもレギュラーシーズンの1試合であろうと、決勝であろうと、どの試合でも本当にみんな変わらず楽しそうにプレーするんです。決勝の前だからって特に意気込むこともなく、でも集中力は高い。そういう人たちをコートの外から見ていて、『ああ本当にすごいな』と感じていました。私もコートに入ったら、そういうふうに楽しみたいなと思って帰ってきたので、今はそうやってプレーができて、すごく楽しいです」

昨年までの自身は対極にあった、と振り返る。
「以前は『やらなきゃ』という気持ちのほうが強かったですね。『コートに入っているんだから、こうしなきゃ』とか。でも今は、こうしなきゃというよりは、『こうしたい』とか『次はこれやってみよう』という考え方ができてきた。トス回しに関しても、『あ、こうなっているから次はこうしてみよう』というふうに考えられているかなと思います。
もちろん25年間そうやって(やらなきゃという考えで)生きてきたので、戻ってしまう時はありますけど、やっぱりいい時の自分を振り返れば、楽しんでいる時なので、そこに立ち返って、切り替えて、また次の日コートに入るという感じですね」
日本は第3週千葉大会2日目の7月10日に、上位8カ国によるファイナルラウンド進出を決めた。
石川真佑(ノヴァーラ)キャプテンや関などパリ五輪を経験したメンバーが軸となってチームを支え、佐藤淑乃(NECレッドロケッツ川崎)ら新戦力が躍動し、ここまで8勝2敗の3位につけている。ただ、新生ジャパンの真価が問われるのはここからだ。予選ラウンド最後の2試合は、パリ五輪で敗れているポーランド、ブラジルとの対戦が残されており、ファイナルラウンドでも強豪との対戦が予想される。
関は大会終盤の戦いに向け、こうポイントを語った。
「強豪国になればなるほど、ミスは減ります。(敗れた)イタリアや中国との試合では、それまで相手のミスで点数を取れていたところで、相手がミスをしてこなかった。終盤に自分たちからミスを吐き出すことなく、精度高くプレーし続けることが大事かなと思います。トスに関しては、ファイナルラウンドに行こうが、相手がどこでも変わらない。ミドルブロッカーを軸としてコンビを組み立てていければと思っています」
どんな相手に対しても、「これやってみよう」のチャレンジ精神を忘れず、関は新境地を切り拓いていく。日本の揺るぎない軸になるために。