[写真]=Photoraid

バレーボールは「コートにボールを落とさなければ負けない」競技だ。強力なスパイクを打たれても、コート外にボールが飛んでも、ボールが床に落ちなければ得点にはならない。

もし攻撃力ではなく、「レシーブ力・つなぎの精度・ブロック力」の守備に特化して、世界最高のチームを編成するなら誰が選ばれるだろうか。

本記事では、世界で活躍する現役選手の中から、データやタイトルの受賞歴をもとに、守備に特化した世界選抜のメンバーを厳選する。

セッター|アントワーヌ・ブリザール

[写真]=兼子愼一郎
  • 国籍 / 所属:フランス代表 / 大阪ブルテオン
  • 身長:196cm
  • 受賞歴:2024年ネーションズリーグ(VNL)MVP&ベストセッター / 2020東京五輪・2024パリ五輪 金メダル

セッターはトスを供給するだけでなく、強打やフェイントボールを拾う守備力、相手スパイクを通さないブロック力も求められる。そのセッター像を体現するのが、ブリザールだ。フランス代表を五輪連覇へと導いた198cmの大型セッターである。

セッターは、他のポジションの選手よりも小柄になるケースがある。そのため相手スパイカーは、セッターの上を狙う場面があるが、身長198cmのブリザールには通用しない。相手スパイカーのコースを読みきり、1人でブロックしてしまう。

さらに相手のフェイントやブロックのこぼれ球など、レシーブ力は世界屈指。スパイカーの体制が悪いときは、スパイクを打って得点にする攻撃力と判断力も備えている。トスワークはもちろん、守備やブロックも世界最強のセッターと言えるだろう。

オポジット|ジャン・パトリ(フランス)

[写真]=Volleyball World
  • 国籍 / 所属:フランス代表 / ガラタサライ
  • 身長:207cm
  • 受賞歴:2024年パリ五輪 ベストオポジット / 2020東京五輪・2024パリ五輪 金メダル

オポジットは「チームの得点源」であり、サーブレシーブせずに攻撃に専念するのが一般的だ。しかしジャン・パトリは、攻撃力はもちろんブロックとディグ力のある選手だ。

パトリのストロングポイントは、相手のアウトサイドヒッターを止めるブロックだ。207cmの長身とコースを読んだ手の出し方で、相手の攻撃をシャットアウトする。

またコートの後ろへと飛んだボールや、強打を拾い上げるディグの読みが極めて鋭い。「ブロックを抜けてもパトリが拾う」というシーンが多くある。フランス代表のディフェンス力が高いと言われる理由は、オポジットであるジャン・パトリの存在が大きい。

アウトサイドヒッター|髙橋藍(日本)

[写真]=兼子愼一郎
  • 国籍 / 所属:日本代表 / サントリーサンバーズ大阪
  • 身長:188cm
  • 受賞歴:2024年VNL 銀メダル / 2023-24 セリエA準優勝(モンツァ)

髙橋藍は188cmという世界基準では小柄な体格でありながら、攻撃力と守備力の両方を備えた世界でトップクラスのオールラウンド選手である。

髙橋の守備力は、単に「ボールを拾える」だけではない。時速120kmを超えるサーブに対しても、セッターが一歩も動かない位置へ吸い付くように返球する。

さらに相手の強烈なスパイクに対しての反応速度、ブロックにあたってはじいたボールへの守備範囲は何度も日本代表を救った。相手のサーブをセッターに返球して攻撃につなげたり、相手スパイクのディグやコート外のボールも拾うプレーは、リベロが2人いるかのような安心感をチームに与えている。

アウトサイドヒッター|トマシュ・フォルナル(ポーランド)

[写真]=Getty Images
  • 国籍 / 所属:ポーランド代表 / アルルンCMCヴァルタ・ザヴィエルチェ
  • 身長:200cm
  • 受賞歴:2024年パリ五輪 銀メダル / 2023年VNL 金メダル / 

世界ランキング1位のポーランド。強打者が並ぶなか、守備で大きく貢献しているのがトマシュ・フォルナルだ。200cmの大型アウトサイドヒッターでありながら、守備力も高い。

フォルナルの強みは、ボールのさばきとコースの読みだ。「相手の強打に対して腕をぶらさず、正面に入って、ふわりと上がるイメージである。

大柄=攻撃力に長けていると思われがちだが、200cmのフォルナルが見せる守備の安定感は、世界選抜に匹敵する技術がある。

ミドルブロッカー|ロベルランディ・シモン(キューバ)

[写真]=Getty Images※写真は2025年7月20日撮影
  • 国籍 / 所属:キューバ代表 / ピアチェンツァ
  • 身長:208cm
  • 受賞歴:2017年世界クラブ選手権ベストミドルブロッカー

守備特化型チームにおけるミドルブロッカー(MB)の役割は、スパイクを叩き落とす「キルブロック」、相手の打ち分けを制限してバックのレシーバーにコースを絞らせる「リードブロック」の精度にある。

長年世界トップミドルブロッカーとしてプレーを続けるのが、キューバのロベルランディ・シモンだ。

シモンの強みは、相手セッターがトスを上げてから反応するリードブロックの速さだ。最高到達点380cmの規格外の高さと長いリーチがある。相手セッターがどこにトスを上げても、長いリーチで追いついてブロックができる。

シモンの手がネットの上から覆いかぶさってくると、相手スパイカーはコースを限定される。結果として、無理に打ったスパイクはアウトになったり、待ち構えるレシーバーに上げられたりする。

相手の攻撃を通さなかったりコースを限定させたりして、守備陣を楽にさせるシモンは、まさに「世界最強の壁」といえるだろう。

ミドルブロッカー|ノルベルト・フベル(ポーランド)

[写真]=前場一輝
  • 国籍 / 所属:ポーランド代表 / ウルフドッグス名古屋
  • 身長:207cm
  • 受賞歴:2023-24シーズン プルスリーガ最多ブロック記録(149本) / 2024年パリ五輪 銀メダル

世界最高峰のポーランドリーグで、1シーズン149本のブロックを決めたのが、ポーランド代表のノルベルト・フベルだ。1試合平均4本以上のブロックを決めた計算になる。現代バレーの歴史においても、異次元の記録といえるだろう。

フベルのブロックがこれほどまでに決まる理由は、高さだけではない。相手セッターを観察しながら、打たれる直前に正しい位置に手を出す、読みの精度がずば抜けているからだ。

ネット際に差し出される手首の角度が完璧で、相手スパイクの威力をそのまま相手コートの床へ叩き落とす。相手チームが連続得点に乗りかけた場面でも、フベルの一発のシャットアウトが試合の流れを引き戻す。

シモンが「コースを消す壁」なら、フベルは「ボールを叩き落とす壁」である。2人が中央に並ぶブロック陣を破るのは至難の業だ。

リベロ|ジェニア・グレベニコフ(フランス)

[写真]=Getty Images
  • 国籍 / 所属:フランス代表 / ウルフドッグス名古屋
  • 身長:188cm
  • 受賞歴:2020東京五輪・2024パリ五輪 2大会連続ベストリベロ

守備型のチームで中心となるのが、「世界最高のリベロ」フランスのジェニア・グレベニコフだ。東京五輪、パリ五輪の2大会連続でベストリベロに選出され、10年以上にわたりトップリベロとしてプレーするレジェンドである。

グレベニコフのディグは、まるで「スパイクが打たれる場所に最初から立っていた」かのように見える。相手セッターのトス回し、スパイカーのフォーム、味方ブロックの状況を確認しているのだろう。

さらにサーブレシーブもセッターが動かない位置に返球できて、崩されることも少ない。「なんでそのボールが拾えるんだ」と観客を驚嘆させるグレベニコフのディグは、何度もチームを救ってきた。

グレベニコフがリベロとしてコート上にいることが、守備陣への安心感を与える。

守備に特化した世界選抜メンバー

今回選出した「守備力特化の世界選抜7人」を改めて整理する。

  • セッター:アントワーヌ・ブリザール
  • オポジット:ジャン・パトリ
  • アウトサイドヒッター:髙橋藍
  • アウトサイドヒッター:トマシュ・フォルナル
  • ミドルブロッカー:ロベルランディ・シモン
  • ミドルブロッカー:ノルベルト・フーバー
  • リベロ:ジェニア・グレベニコフ

バレーボールは得点シーンが華やかだが、「ボールを落とさない執念」も魅力のひとつだ。もしこの7人が同じコートに立てば、ボールがコートに落ちずにラリーがずっと続く試合が実現するかもしれない。

この記事を書いたのは

重村暁希

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