バレーボールにおいて、チームの勝敗を大きく左右するポジションがセッターである。スパイカーに上げるトスの精度はもちろん、相手ブロッカーとの駆け引きや攻撃の組み立てなど、求められる役割はさまざまだ。
では、世界最高のセッターは誰なのか。大会ごとに発表されるセッター部門の数字、出場試合数やチームの攻撃回数によって異なるため、世界一を決めるのは難しい。本記事では、現代バレー界の「最高峰のセッター5人」を紹介する。
シモーネ・ジャネッリ

- 国籍 / 所属:イタリア代表 / ペルージャ
- 身長:200cm
- 受賞歴:2022年世界選手権 MVP / 2026年セリエA優勝
2022年の世界選手権MVP、2025年の世界クラブ選手権MVP、2025-26シーズンはペルージャで4冠を達成と、輝かしい実績を残しているのがシモーネ・ジャネッリだ。
ジャネッリの強みは200cmの高さ。通常ならトスを上げる2本目をツーアタック、サーブやブロックでも得点できるため、相手はジャネッリも警戒しなければならない。
200cmの高さを生かした得点力と、相手ブロックをあざ笑うかのようなトス配分は世界でもトップクラス。代表とクラブの両方で結果を出し続けるジャネッリが、ナンバーセッターに最も近い選手といえるだろう。
アントワーヌ・ブリザール

- 国籍 / 所属:フランス代表 / 大阪ブルテオン
- 身長:196cm
- 受賞歴:2024年ネーションズリーグMVP&ベストセッター / 2020東京五輪・2024パリ五輪 金メダル
フランス代表をオリンピック2大会連続の金メダルへと導いたのが、アントワーヌ・ブリザールだ。東京・パリオリンピックでフランスの2連覇に貢献し、パリ大会ではベストセッターを受賞した。
ブリザールの魅力は、何をしてくるかわからない怖さにある。ネットから離れたレシーブでも、速攻を使ったりコートの反対側へも正確にトスを上げたりする。ツーアタックと見せかけてトスを上げることもあれば、2本目で打ち切ることもある。
さらに得点力も備えている。2025-26シーズンのSVリーグでは、セッターでありながら49試合で209得点を記録した。内訳はアタック101点、ブロック62点、サーブ46点。
通常、セッターが1本目を触れば、2本目は別の選手がトスを上げる。しかしブリザールは、その場面でも助走に入り、スパイカーとして攻撃へ参加する。トスを上げるだけでなく、自らも得点して相手ブロッカーの判断を遅らせるのが強みだ。
今季も大阪ブルテオンでプレーすることが決まっており、世界最高峰の技術で日本のファンを魅了することが期待されている。
マイカ・クリステンソン

- 国籍 / 所属:アメリカ代表 / ラナ・ヴェローナ
- 身長:198cm
- 受賞歴:2016リオ五輪・2024パリ五輪 銅メダル / 2023年VNL ベストセッター
長年にわたりアメリカ代表の司令塔としてチームを支え続けるのが、マイカ・クリステンソンだ。クリステンソンは、派手さよりも正確さが魅力のセッターだ。
セッターに必要なのは、毎回同じ場所へ上げることだけではない。スパイカーにあわせた、トスの高さや速さを瞬時に判断して供給することも必要になる。クリステンソンは、正確でタイミングの合った配球によって、それぞれの選手の持ち味を引き出すのだ。
実際に2023年のネーションズリーグ決勝ラウンドでは、トスの質を示す公式統計で成功100本、ミス0を記録しセッター部門1位となった。
崩れたボールに対してもジャンプセットを貫き、テンポを落とさずに攻撃を組み立てる技術がある。味方にとっては迷わず助走へ入れるセッターであり、相手にとっては配球先を絞れないセッターだ。攻撃を高い精度で繰り返せることが、クリステンソンの強さである。
ブルーノ・レゼンデ

- 国籍 / 所属:ブラジル代表 / ヴォレイ・ヘナタ
- 身長:190cm
- 受賞歴:2016リオ五輪 金メダル
ブルーノ・レゼンデは、現代バレーを語るうえで欠かせないセッターだ。ブラジル代表としてオリンピック5大会に出場し、リオ大会の金メダルを含む3つのメダルを獲得した。
2026年の南米クラブ選手権では、ヴォレイ・ヘナタをクラブ初優勝へ導き、大会MVPとベストセッターを受賞した。ブルーノの魅力は、トスの技術だけでなく、6人を一つにする統率力にある。ブルーノは強い感情表現で味方を鼓舞し、プレー中も積極的に声をかける。
ブルーノの圧倒的なキャプテンシーは、チームを鼓舞して士気を上げる。キャリアを重ねた現在もフットワークの速さは衰えてはいない。勝者のメンタリティとゲームメイクは、今でも世界トップクラスである。
関田誠大

- 国籍 / 所属:日本代表 / サントリーサンバーズ大阪
- 身長:175cm受
- 賞歴:2024年VNL 銀メダル / 2023年VNL 銅メダル
世界基準から見れば175cmと小柄な体格でありながら、世界と対等に戦ってきたのが日本の天才司令塔である関田誠大だ。男子日本代表が世界トップクラスへと飛躍した立役者である。
関田のうまさは、ボールに触る前の情報処理にある。レシーブが上がると、落下地点へ移動しながら一瞬だけ相手コートを見る。確認しているのは相手のブロッカーだ。中央を警戒しているならサイドへ振り、サイドへの移動を始めているなら中央からの速攻を使う。ボールから一度目を切って相手を見たあと、正確なトスを上げている。
また体をレフト側へ向けたまま、反対のライト側にもトスを配球する。ボールを捉える位置やフォームが変わりにくいため、相手ブロッカーは方向を読めない。高さではなく、視線、移動の速さ、一定のフォーム、相手を見てから決める配球で勝負する。
大型のセッターが多いなか、関田は技術で世界と勝負している日本が誇る世界トップクラスのセッターだ。
番外編|次世代の若手セッター2人
今回紹介した5人以外に、これから世界トップクラスのセッターになることが期待されている若手選手を2人紹介する。
- シメオン・ニコロフ
- アミル・ティジ=ウアル
シメオン・ニコロフ|208cmの超攻撃型セッター

ブルガリア代表のシメオン・ニコロフは、2006年生まれ、身長208cmの大型セッターだ。
18歳で出場した2025年の世界選手権では、ブルガリアの銀メダル獲得に貢献した。セッター部門で大会1位となり、7試合で44得点も記録している。高い位置からのトスに加え、得点できる選手だ。最高到達点360cm超から打ち下ろされるジャンピングサーブとスパイクは、オポジット顔負けの破壊力を秘めている。
2026-27シーズンからはイタリアのルーベでプレーする。まだ19歳であり、次代の世界最高候補として注目される1人だろう。
アミル・ティジ=ウアル|ブリザールの後を追うフランスの逸材
フランス代表のアミル・ティジ=ウアルは、2005年生まれで身長200cmのセッターだ。
2023年のU19世界選手権でフランスを優勝へ導き、ベストセッターを受賞した。2024年のU22欧州選手権でも優勝し、大会MVPに選ばれている。高さを生かしたブロックやツーアタックも備えており、トス以外でも相手に圧力をかけられる。
長身を生かした高い打点からのトス回しに加え、ブロックの高さとコートカバー力の広さも魅力。代表絶対的セッターであるブリザールの後継者として、今後のフランス代表を背負うであろう逸材だ。モデナとは2029年まで契約を結んでいる。ブリザールに続くフランスの司令塔として、今後の成長に注目だ。
世界最高の司令塔たちが生み出す現代バレーの進化
本記事では、世界最高峰のセッター5人と次世代を担うであろう若手2人を紹介した。
- シモーネ・ジャネッリ
- アントワーヌ・ブリザール
- マイカ・クリステンソン
- ブルーノ・レゼンデ
- 関田誠大
- シメオン・ニコロフ
- アミル・ティジ=ウアル
近年の実績で考えると、世界最高の本命はジャネッリだろう。ただし、5人は異なる方法で相手ブロックを迷わせ、味方の力を引き出している。
大型のセッターが世界で活躍するなか、身長175cmで世界と対等に戦っている関田は異質の存在だ。相手を見る力と正確なトスワークで、日本代表をけん引している。
国際大会や各国のリーグを観戦する際は、セッターのトスワークと得点力にも注目してほしい。




