「楽しかったです」
インターハイ準々決勝で東山に敗れ、気落ちしているかと思いきや、川内商工の2年生エース・田中洸は、清々しい表情で言った。
「あれだけの、世代を代表する岩田(怜緯)さんと、張り合えたというか……。向こうはどう思っているかわからないですけど、自分の中では張り合えたんじゃないかなと思います。1本ブロックされたんですけど、自分もしたので」
プレーも精神面も、成長の証をしっかりと刻んだインターハイだった。
特に強烈なインパクトを残したのは、トーナメント2回戦の松本国際戦だった。第1セットを25-22で奪うが、第2セットはリードを許し、一時は5点差をつけられた。しかし19-22の場面で田中にサーブが回ると、思い切りのいいスイングから強力なサーブを打ち込んで崩し、立て続けにバックアタックを決めて22-22の同点に。さらに、サービスエースで23-22と逆転すると、もう止まらない。最後は自分で拾って、自らバックアタックを決め、怒涛の5連続得点で試合を締めくくった。

その最後の連続ブレイクを、「『俺がやる』という思いしかなかった」と田中は振り返った。
「途中から相手の対策に捕まって、スパイクが全部拾われていたので、自分の中でストレスがかかっていた。ここでその思いを力に変えて、最後は自分が決めてそれまでのストレスをチャラにしようという気持ちでやりました」
課題として取り組んでいるストレートのスパイクも要所で見せた。
「自分の弱点は、クロス一辺倒になってしまって、ストレートが少ないこと。今日は、クロスが決まらなくなってきたら、まずストレートで1本決めていこうという意識でやっていました」
それでいて、最後はクロスで勝負した。川内商工の宝満陸監督はこう明かした。
「試合中ずっと、クロスのスパイクを松本国際の溝渕(冬馬)選手に拾われていたので、『クロスには溝渕がいるからストレートで勝負してもいいぞ』という選択肢を本人には与えていました。でも、試合が終わった後、『悔しかったんで最後はクロスで勝負しました』と。結局最後は、拾われていたところで勝負して、決め切った。負けず嫌いですね。そこでちゃんと勝負できるだけのメンタルも、決め切るパワーも、成長してくれています」
今年7月に行われたU18アジア選手権で日本代表のキャプテンを務め、準優勝に貢献したことも大きな経験となった。そこでストレート打ちの重要性を感じたと田中は言う。
「国内にはいない高さのミドルブロッカーが押し寄せてきて、なかなかクロスを通せないということがあったので、やっぱり速いテンポで、ブロックが来る前にストレートに抜いたり、ブロックに当てて飛ばして決めることも必要。日本代表の宮浦(健人)選手や西田(有志)選手もそういうことをしているので、やっぱり自分もそうやっていかないと、世界に通用しないんだなと自覚しました」
また、代表でトレーニングやケア、食事管理の知識を学んだことも大きかった。
「ユース(U18)に行った時に、『自分に足りないものは何ですか?』と、トレーナーの方達に聞くと、まず、自分はまだ線が細いので、自分が考えているよりも食事を多く摂ったり、肩を痛めやすいので、チューブでインナーマッスルを鍛えたり。今はそういう基礎をしっかり作って、大学ではしっかりウエイトトレーニングもやりながら体を太くしていこうという話をされました」
自身の中の「パワーが足りない」という課題意識と、そうしたアドバイスが合致。代表から戻ってからは、練習前に必ずチューブトレーニングをし、食事の量を大幅に増やした。
「計算しながらやっているんですけど、毎日ご飯を、朝は400g食べて、学校の1時間目から4時間目の間に頑張って500g摂って、昼に300g、最後に夜は1kg食べています。本当に吐きそうになるぐらい(苦笑)。そのぐらいしないと、自分は本当に太らない体質なので」
まさに食事もトレーニング。その成果を徐々に感じ始め、今回のインターハイでも勝ち上がるにつれ自信を得ていたからこそ、「大エース」と呼ぶ東山・岩田との勝負も楽しめた。
第1セットは出だしに1-6と圧倒され、大差でセットを奪われたが、田中はひるんでいなかった。セット間の円陣では、「絶対1セット目のようなカタチにはしないぞ!」とチームに喝を入れた。

「あの1セット目の状況を、2セット目まで続けて終わりたくなかったので。正直、コートに入ったら年齢とか関係ないんで。2年生になってから、勝つためには自分が声を出すしかないなと思って、そこは意識を変えてやっています。2セット目はみんな、やるべきことをしっかりやってくれたと思います」
宝満監督は、「昨年は3年生が(1年生だった)田中を助けようという気持ちでやってくれていたから、田中もやりやすかったと思う。でもそういう3年生が抜けて、今年は昨年に比べたらどうしても戦力が落ちる中、田中が昨年以上に『やってやろう』という気持ちでやってくれている。劣勢になった時に、自分から『もう全部俺に持ってこい』『ハイセットになったら俺でいいから』とボールを呼んでやってくれている」と頼もしそうに見つめる。
身長194cmで抜群の跳躍力としなやかさを備える大器が、着々とリーダーシップも身に付けつつある。




