ロラン・ティリ監督が男子日本代表を率いて2年目を迎えた。
就任1年目の2025年は、世界選手権ではトルコやカナダに敗戦して、予選ラウンドで敗退。石川祐希は帰国後、チーム作りや攻撃だけでなく、新たに取り入れたサーブ戦術にも改善の余地があったと振り返った。
一方、2026年のネーションズリーグでは、予選ラウンドを12戦全勝で通過。VNL男子大会で予選ラウンドを全勝した初のチームとなった。ファイナルラウンドは4位に終わったものの、1年目とは違う姿を見せている。
就任2年目で日本代表は何が変わり、どのような進化を遂げているのか。戦術面の変化と選手起用・選考方針について解説する。
サーブ戦術の変化|相手の主力スパイカーに負荷をかける

ティリ監督の体制では、レセプションの技術にかかわらず、相手の主力スパイカーへサーブを集める戦術を採用した。
一般的なサーブ戦術は、「相手チームの中でレセプションが苦手な選手を狙う」という考え方だった。苦手な選手を狙ってレシーブを乱して、クイックやパイプ攻撃を潰す戦術である。
ティリ監督は、相手主力選手にサーブを集めて負荷をかける戦術を採用した。相手エースに1本目をレシーブさせることで、助走の体勢とテンポを奪うのが狙いだ。もしサービスエースを取れれば、精神的に追い込むこともできるだろう。
しかし2025年世界選手権のトルコ戦では、相手エースにサービスを集めたが成功率が高くて攻撃が安定していた。主力スパイカーへ負荷をかけるはずが、レセプションを安定させてしまったことが敗因の一つになったのだ。
相手エースがどんなにレセプションが得意な選手でも、崩れるようにサーブを磨くのか、またはサーブの狙いを変更するのか。ティリ監督のサーブ戦術に注目だ。
選手起用の変化|スタメンに固執しない総力戦

選手起用の変化が表れたのが、ネーションズリーグ予選ラウンドのカナダ戦だ。
日本は髙橋藍、石川、西田有志をスタメンに並べたが、第1セットを18-25、第2セットを24-26で落とした。石川はレセプションが崩れる場面が多く、西田は決定率を落として調子が上がらなかった。
そこでティリ監督は、第2セットの途中から富田将馬と宮浦健人を投入。第3セットからは大塚達宣をスタメン起用したのだ。
大塚は途中出場ながらチーム最多の18得点をマーク。宮浦も高打点からスパイクで15得点、富田は安定したレセプションで攻撃を支えながら14得点を記録した。第3セットを29-27で奪うと、第4セットは25-19、第5セットは15-11。0-2から3-2の逆転勝利を収めた。
試合後、大塚は「ベンチにいるメンバー含めて、選手、スタッフ全員が誰一人諦めず戦い続けた」と振り返った。実績のある選手だけに試合を託すのではなく、機能している選手をコートへ残した判断が、逆転につながった。
選考基準の変化|パフォーマンス重視で固執しない

ティリ監督は2026年の代表選考について、年齢ではなくパフォーマンスを重視し、安定感と突出した力を備えた選手を選んだと説明している。
年齢や過去の実績、代表での序列にかかわらず、コート上で結果を出している選手を使う方針だ。カナダ戦では、日本代表の中心である石川、髙橋藍、西田を交代させ、大塚、富田、宮浦を軸に試合を終えた。まさに「パフォーマンス」を重視した形である。
とくに「パフォーマンス重視」を体現したのが、セッター深津英臣の起用だ。これまで正セッターだった関田誠大が不在のなか、筆頭は永露元稀や大宅真樹だった。しかし2026年のネーションズリーグでは、36歳ながらもウルフドッグス名古屋で活躍していた深津が全試合スタメンだった。ミドルを多用するトスワークと、ギリギリまでどこに上げるかわからないフォームで相手に的を絞らせなかった。
ティリ監督の体制では、流れを変えられる選手やスキルのある選手が選考される。スタメンと控えの境界が薄くなったり、実績のある選手が選ばれることで、選手層をさらに厚くするだろう。
ティリ監督2年目で見えた男子日本代表の変化
ロラン・ティリ監督2年目を迎えた男子日本代表の変化は、おもに以下のポイントだ。
- 相手の主力スパイカーへサーブを集め、攻撃のテンポと決定率を奪う戦術
- 途中出場を含めた総力戦でのスタメン起用
- 「パフォーマンス重視」の選考方針
個々のスキルを土台にしながら、戦術と全員バレーのティリ体制の日本代表。アジア選手権優勝、そして2028年ロサンゼルスオリンピックへの切符獲得に向けて、進化を続ける男子日本代表の戦いに注目だ。




