世界最高峰の監督

トーマス・サムエルボ(大阪ブルテオン/フィンランド/50歳)は、代表とクラブの両方で世界最高峰の大会を制してきた世界的名将だ。
東京五輪ではロシア代表を銀メダルに導き、ポーランドリーグの強豪ザクサでは欧州CL優勝を果たした。
昨季は就任1年目の大阪Bで、世界クラブ選手権銀メダルとSVリーグ優勝を成し遂げている。
現役時代はフィンランド代表で長年主将を務め、世界3大リーグでも活躍。2005年には日本の豊田合成(現・ウルフドッグス名古屋)でもプレーした。
2013年に指導者へ転身すると、翌年にはフィンランド代表を32年ぶりの世界選手権出場へ導いた。
その後はロシア1部のケメロヴォを就任3季目でクラブ初のリーグ優勝へと導き、2021年にはロシア代表を率いて東京五輪銀メダルを獲得。2023年にはザクサで欧州CL優勝を果たした。
パリ五輪ではカナダ代表を指揮し、昨年来日した。
そんなサムエルボ監督が大切にしているのが「凡事徹底」だ。
さまざまなインタビューで「当たり前のことを当たり前にやることが最重要」と断言。今季も「優勝したからこそ、向上心と謙虚さを持つことが大切」と語り、慢心することなく連覇を狙う。
元フランス代表セッター

オリビエ・キャット(サントリーサンバーズ大阪/フランス/59歳)は、サントリーを初代SV王者と天皇杯の二冠へ導いた監督だ。
現役時代は188cmの左利きセッターとして、フランス代表で1992年バルセロナ五輪を含む通算110試合に出場した。
2002年に現役を引退すると、2006年から指導者の道を歩み始め、フィリップ・ブラン前日本代表監督が率いたフランス代表でもコーチを務めた。
クラブの監督としてはフランス1部リーグで、2011年にポワティエ、2022年にモンペリエを優勝へ導いている。
そんなオリビエ監督が大切にしているのは「チーム力」だ。
サントリーが優勝した直後のインタビューでも、「特定の誰かのおかげではなく、チームの優勝」と語った。戦術についても「ブロックとディフェンスの連動が大事」と話すなど、チーム全体の力を重んじる発言が多い。
今季は選手の顔ぶれが大きく変わったが、昨季の悔しさを胸に王座奪還を目指す。
日本指導界のパイオニア

真保綱一郎(ジェイテクトSTINGS愛知/日本/54歳)は、日本バレー界の指導者のパイオニア的存在だ。
指導者として海外クラブに挑戦し、チェコ、イタリア、ドイツの欧州3カ国を渡り歩いた。
指導者としてのキャリアは、駒澤大在学中の19歳の時、母校・駒大高でスタートした。
1999年に27歳でチェコへ渡り、1季コーチを務めた。2002年にはセリエAのクーネオとピアチェンツァで計2年間、コーチを務めた。
2004年に日本へ帰国してからは、コーチとして女子の久光製薬(現・SAGA久光スプリングス)のVリーグ優勝、男子のパナソニック(現・大阪B)でも4度のVリーグ優勝を支えた。
そして2015年にはコーチとしてドイツ1部のベルリンへ再び海外挑戦し、リーグ、ドイツ杯、CEV杯の三冠を経験した。
2016年に再び日本へ戻ってからは、男子の堺(現・日鉄堺BZ)とFC東京でそれぞれ3季ずつ監督を務め、チーム譲渡後の東京GBでも初代監督として1季指揮を執った。
一昨季はSTINGS愛知のコーチとして準優勝を支え、昨季から監督に昇格。就任1季目でSTINGS愛知をSVリーグ3位とアジアCL3位へ導いた。
世界へ飛び込んだパイオニア指揮官が、悲願のSVリーグ優勝を狙う。
名門卒の超頭脳

ヴァレリオ・バルドヴィン(ウルフドッグス名古屋/イタリア/60歳)は、名門大学出身の頭脳と確かな育成力を持つ監督だ。
世界最古の大学であるボローニャ大学のスポーツ科学部を、110点満点の首席で卒業している。
日本で例えるなら、東大・京大クラスのスポーツ科学部をトップの成績で卒業したエリートだ。
プロ選手としての経験はないが、現役時代はセッターを務めていた。
28歳だった1994年に指導者の道へ進み、イタリアの世代別代表やセリエAの監督を歴任した。
7季率いたパドヴァでは、現イタリア代表リベロのファビオ・バラーゾとアウトサイドヒッターのマティア・ボットロを育て上げた。昨年はこの2人がスタメンを務めたイタリア代表が世界選手権優勝を果たしている。
さらに同クラブで石川祐希、続くヴァレンティアでは西田有志も直接指導し、2022年に来日した。
WD名古屋では就任1季目にVリーグ優勝、昨季は天皇杯優勝を成し遂げた。
指導一筋32年の知将が、SVリーグ初優勝を狙う。
世界最高コーチの1人

ハビエル・ウェベル(広島サンダーズ/アルゼンチン/60歳)は、選手と監督の両方で五輪を戦い、広島THを2季連続のCS進出へ導いた名将だ。
現役時代はアルゼンチン代表のセッターとして五輪に3度出場し、1988年ソウル五輪で銅メダルを獲得した。
2002年に指導者へ転身すると、ブラジルやギリシャの男子1部でリーグ優勝を達成。母国のボリバル・バレーではリーグ4連覇を果たした。
2009年からはアルゼンチン代表の監督に就任し、2012年ロンドン五輪で5位に入賞した。
2022年からはアメリカ代表のコーチを務め、2024年パリ五輪での銅メダル獲得に貢献した。
教え子のテイラー・エイブリルは「世界最高のコーチの1人。彼にバレー人生を変えられた」と絶賛する。
そんなウェベル監督が広島THの最大の武器に育て上げたのが「ブロック」だ。
就任1季目にはブロックランキングで全クラブ中1位を記録。2季目も個人部門で三輪大将と西本圭吾が日本人選手のワンツーを記録した。
自慢のブロックを武器に、就任3季目となる今季は準々決勝の壁を破り、ベスト4進出を狙う。
不屈の指揮官

マウリシオ・パエス(東京グレートベアーズ/ブラジル・フランス/63歳)は、フランス1部の監督や各国代表のコーチを幾度も務めてきた名将だ。
現役時代はアウトサイドヒッターとして、ブラジルのアンダーカテゴリーでプレーした。
その後はフランスのクラブで活躍し、1994年から同国で指導者の道へ進んだ。
フランス1部のパリ・バレーではコーチと監督としてリーグ4連覇を経験。続くトゥールでも監督としてリーグ4連覇や2度の国内三冠を達成している。
2016年からは日本の男子・パナソニック(現・大阪B)で4季コーチを務め、Vリーグ連覇や国内三冠に貢献した。
しかし近年は、2024年にイラン代表の監督を成績不振で解任されたほか、韓国Vリーグのウリィカードでもシーズン途中で退任するなど、プロ監督としての厳しさを味わった。
そんな中、今年2月には降格の危機にあった古巣パリ・バレーの監督に緊急復帰。チームを瞬く間に立て直し、復帰からわずか46日で1部残留と22年ぶりのフランス杯優勝へと導いた。
復活を遂げた不屈の指揮官が、東京GBをクラブ初のベスト4以上へと引き上げる。
バレー大国の参謀
ジェルソン・デ・オリベイラ・アモリン(日本製鉄堺ブレイザーズ/ブラジル/47歳)は、バレー大国ブラジルの各世代の代表で長年コーチを務めてきた指導者だ。
選手経験はなく、22歳だった2001年に母国の名門レクソナ女子のスタッフとして指導者の道へ進んだ。
ブラジル大学代表の監督を経て、2009年からはブラジル男子U19・U21代表のコーチとして8年間にわたり若手を育てた。
2017-18シーズンにはサントリーで1季コーチを務めた経験も持つ。
その後はポルトガル1部の強豪スポルティングの監督として、カップ戦優勝を果たした。
2024年にはブラジ子B代表のコーチとして、日鉄堺BZに新加入したチゾバ・ネベスらを指導。昨季は日鉄堺BZのコーチを務め、今季から監督に昇格した。
外国籍選手枠が3人に広がった今季は、初来日の外国人選手3人を素早くチームに馴染ませるため、大宅真樹とトンマーゾ・リナルディをW主将に指名した。
日本人選手と4カ国の外国籍選手を一つにまとめ上げ、2季連続7位からの巻き返しを狙う。
元日本代表セッター
阿部裕太(東レアローズ静岡/日本/45歳)は、現役時代に191cmの長身セッターとして世界選手権やワールドカップで司令塔を務め、東レアローズを2度のVリーグ制覇へ導いたレジェンドだ。
東海大在学中の19歳で代表デビューを果たし、世界選手権などに出場した。
2004年に東レへ入団すると、1年目にクラブ初のVリーグ優勝と新人賞に輝いた。
2012年からはサントリーで5季プレー。34歳で4年ぶりのワールドカップ出場も果たすと、2017年にコーチ兼任で東レへ復帰し、2019年に現役を引退した。
実はコーチ専任時代の2022年3月には、チームのセッター不足という緊急事態を受け、40歳で一時的に選手として再登録された。
5年間のコーチ経験を経て一昨季から監督に就任したが、過去2季はともに8位と悔しい結果が続いている。
だからこそ、今季のチームスローガンは「覆せ。」だ。
昨季主将の藤中優斗ら7人が退団した一方、アメリカ代表のガブリエル・ガルシアら新外国籍選手3人やセッターの中島健斗など6人を補強。24歳の武田大周を新主将に据えた。
メンバーを大きく入れ替えて心機一転、常勝軍団の復活を狙う。
「責任は私がとる」松本の若きボス
トーマス・ボブ・ラーナー(信州松本トライデンツ/ドイツ/39歳)は、母国ドイツを中心に活躍してきた監督だ。
ドイツ代表のパリ五輪ベスト8入りをコーチとして支え、ドイツ1部のヘルシング・アム・アマーゼーの監督として、クラブ初のドイツ杯準優勝へ導いた。
現役時代は身長203cmのミドルブロッカーとしてドイツ1部でプレーし、2016年に指導者へ転身した。
ドイツ女子1部のシュトゥットガルトや男子の名門フリードリヒスハーフェンでコーチ経験を積み、2021年からドイツ代表のコーチに就任した。
2022年からは古巣ヘルシングの監督も4季兼任してチームを躍進させ、今季から信州松本トライデンツの再建を託された。
そんなラーナー監督は、3年計画でのメダル獲得を掲げている。
昨季最下位に沈んだチームを変えるため、選手には「責任は監督の私が負うから、自分で決めて思い切り挑戦してほしい」と伝えた。
主将の工藤有史も、監督の言葉によって強気に攻められるようになったと証言する。
今季は3年計画の初年度としてCS進出を狙う。
ヴォレアス一筋10季目

エド・クライン(ヴォレアス北海道/クロアチア/45歳)は、2017年のVリーグ参入初年度からヴォレアスを率い、3部と2部で優勝を重ねてトップリーグへ引き上げた、就任10季目を迎える監督だ。
自身の選手経験は高校までで、大学進学後の2002年に21歳の若さで指導者としてのキャリアをスタートさせた。
20代のうちにスイスやスロベニアの強豪クラブを渡り歩き、クロアチアやスロベニアなど3カ国の代表コーチも務めた。
2011年からは母国の名門ムラドスト・ザグレブ女子の監督を5季務め、若いチームでリーグ優勝を果たした。
2017年の来日当初は、専用の練習拠点やトレーニング器具すらなく、専門のコーチやトレーナーも不在という環境だった。戦術指導から選手の体調管理まで、あらゆる業務を1人で担った。
そんなゼロからの船出でチームを鍛え上げ、昨季は天皇杯で前回王者のサントリーを破るなど快進撃を見せ、初の準優勝を成し遂げた。
節目の10季目となる今季、悲願のCS進出を狙う。
現役時代は選手と監督の二刀流
上杉徹(北海道イエロースターズ/日本/46歳)は、昨季のVリーグでクボタスピアーズ大阪を優勝へ導き、今季から3季ぶりに古巣・北海道YSへ戻ってきた監督だ。
現役時代はリベロとしてVリーグ2部のTOYO TIRESなどで活躍し、29歳の時にはデンマーク1部リーグでもプレーした。
帰国後の2011年から2014年までは、NBKドリーマーズ(現・奈良ドリーマーズ)で現役選手を続けながら、母校・佛教大の監督も兼任し、チームを関西1部昇格へ導いた。
その後は指導者に専念し、日鉄堺BZで6シーズンにわたりコーチ兼アナリストを経験した。
2020年からの3季は前身のサフィルヴァ北海道(現・北海道YS)を率いた。その後、クボタへ移り、昨季のVリーグ決勝では北海道YSを破って初優勝を果たした。
先日のフラーゴラッド鹿児島戦では、念願のSVリーグ初勝利を挙げた。上杉監督は、チーム最大の強みである粘り強さを発揮できたと振り返る。
格上の強豪相手にも全員でボールに食らいつき、番狂わせを狙う。
元先生監督
藤田高教(フラーゴラッド鹿児島/日本/65歳)は、長年山口県の高校で体育教師を務めてきた「元先生監督」だ。
定年まで半年足らずだった昨年9月、高校を退職してF鹿児島の監督になる道を選んだ。
母校・宇部商高の監督時代には、2010年のインターハイと2011年の国体で全国優勝を達成した。
SVリーグの第一線で戦う藤中謙也・優斗・颯志の3兄弟も、高校時代の教え子だ。
さらに全国高体連の男子強化委員長や全国高校男子選抜、U16男子日本代表の監督も歴任した。
副将の長友優磨も、SVリーグにいる選手のほとんどが一度は藤田監督と関わっていると証言するほどの有名人だ。
そんな藤田監督のすごさは「65歳になっても学び続ける謙虚な姿勢」にある。
練習中は誰よりも早くボール拾いに走り、年下の外国人コーチからも新しい戦術を吸収する。
主将の峯村雄大も、年齢に関係なく学び続け、選手の声に耳を傾ける監督の姿勢を強くリスペクトしている。
SVリーグ最年長の新米プロ監督の挑戦に注目だ。




