[写真]=湊昂大

 永露元稀の視線は常に上にある。広島サンダーズで2年目を迎えた身長192センチの大型セッターは、「1年目で学んだことをしっかりスタートから出していきたい」と新シーズンでより高みを目指す。

 昨年6月、永露はさらなる成長を求めて広島THに加入した。セッター出身の名将ハビエル・ウェベル監督のもと、1年目はレギュラーシーズン全44試合とチャンピオンシップ2試合に出場。背番号21は、「セッターとしての技術や立ち振る舞いとか本当に基本中の基本からまた教えてもらい、いろんなことを吸収した1年でした」と新天地で確かな手応えをつかんだ。

「例えば、技術だったら安定感を増すために『デコの前でボールを取りなさい』と教わったのが1つ。それと、セッターはチームの司令塔で1番ボールを触るポジションだし、どれだけスパイカーが気持ちよく打てるかはコミュニケーションが大事になるので、自分のチームだという意識を持って、勝たせるセッターとしての取り組み方を教わりました」

 SVリーグのシーズン後には日の丸も背負って戦った。2026年のネーションズリーグでは深津英臣(ウルフドッグス名古屋)とのセッターコンビで日本代表メンバー入りし、主に途中出場で攻撃のリズムを変える切り札として活躍。「代表で何かを培ったというよりは、広島でセッターとして学んだことを代表で出せたのが大きかったです」と胸を張った。

「海外の選手たちを相手にプレーするのはなかなかない機会ですし、高さもパワーも日本人選手とは全然違いました。その中でも、こっちにトスを上げればブロッカーはついてこられないとか、相手は大きいぶん両サイドの動きが遅いとか、状況や相手の特徴を考えながらプレーできました」

 大会後はロラン・ティリ監督の意向でセッター交代によって代表メンバーから外れたが、しっかり収穫を持って広島に帰ってきた。

「ティリさんとはミーティングをしてセッターが代わる経緯を伝えてもらいました。やっぱり深津さんのテンポ感は僕じゃ真似できないところもあるので、そこは納得した部分です。でも世界で戦っていくうえで、しっかり打たせるトスは僕の強みだと思っているし、Bチームの選手たちとコンビを合わせて、途中から出てガラッと変わっても結果を出せたと思います。そこはティリさんとの話し合いでも照らし合わせられたので良かったです」

 いまでは日本代表に名を連ねる実力派セッターだが、もともと東福岡高校ではミドルブロッカーとして活躍し、高いハンドリング能力を活かして東海大学でポジションを転向した。きっかけは、「本当に感謝している存在」という高校時代の恩師、藤元聡一監督の「ここから上で戦っていくには身長が高くてブロックができるセッターが必要だ」という言葉だった。

 当初はポジション転向に納得いかず、葛藤もあった。ただ、日本代表やトップリーグで活躍するという自分の目標と、信頼する監督の思いが合致し、すべては上を目指すために決断してセッターの道を歩み始めた。大学卒業後は、ウルフドッグス名古屋に加入して天皇杯やリーグ戦で優勝を果たし、2024-25シーズンには大阪ブルテオンでレギュラーシーズン優勝に貢献。巧みなトスワークを武器に司令塔として豊富な経験を積んできた。

「セッターは見えないところで点数を取らせるポジションだと思っていて、スパイカーを操ってゲームメイクできるところにやりがいを感じています。もちろん1番ボールを触るので、精度が求められる難しいポジションですけど、そのぶん試合に勝ったり、スパイカーが気持ちよく打ったりすると、セッターとしてはすごく気持ちいいです」

 広島で勝負の2年目が始まった。昨季超えのベスト4入りを目指すチームには、新たにオポジットのアミン・エスマエイルネザドとアウトサイドのモビン・ナスリ・マスタナバドという強力なイラン代表コンビが加わった。だが、海外経験も豊富な新加入2選手が合流したのは代表活動後のシーズン開幕目前。調整の時間も少なく、チームとしては難しいスタートとなった。

 シーズン開幕2試合は信州松本トライデンツとのアウェイゲームでどちらもフルセットの末に連敗。永露は、「ブロックディフェンスやコネクションのところはなかなか噛み合わないところが多く、そこで負けたイメージが大きいです」と悔しさを滲ませた。

 ホーム開幕戦だった東京グレートベアーズ戦GAME1も、広島はセット終盤の大事な局面でミスが目立ち、接戦をものにできず1-3で敗戦。背番号21は、「2点差で負けるセットが多かったので、1人がワンプレーをしっかり決めきれば、その点差も逆にひっくり返る展開だった。終盤の自分たちの弱さはこの3試合でみんな感じているので、しっかり反省したいです」と冷静に振り返った。

 開幕3連敗の厳しいスタートだったが、その中でも30歳のセッターは上を向いていた。「劣勢な場面でも自分たちのシステムを信じて、自分や外国籍選手たちがエネルギーを出して活気ある雰囲気で戦えたので、そこは絶対に忘れてはいけない。その大前提のところは継続してやっていきたいです」と常に戦う姿勢を貫く。

 ウェベル監督も東京GB戦GAME1後、永露のパフォーマンスについて、「コネクションの質はまだまだ必要だし、特に20点以降に相手がブロックで走ってくる状況の対応とか細かい質はまだまだこれから時間をかけて上げないといけない」と指摘しつつも、「1週目よりも内容やプレークオリティが上がったと思います。まだ十分ではないですが、それは非常に重要なことです」と進歩を強調した。

 広島は東京GB戦GAME2をフルセットの末に制し、開幕4試合目で待望の初勝利をつかんだ。ここからの飛躍の鍵を握るのは、アジア屈指の実力を持つエスマエイルネザドを筆頭とした選手たちの“コネクション”だろう。

 司令塔として大きな役割を持つ永露は、「練習と試合を重ねて1つ1つパズルのようにピースを合わせていくような作業になる」と選手1人ひとりの強みや状態を見極めながら連携を深めてチームを押し上げる。その原動力は、「スパイカーには100パーセントで打たせたい」というセッターの矜持。常に上を目指す永露のトスアップが広島を高みへと導いていく。

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湊昂大

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