バレーボール男子日本代表の関田誠大。身長175cmと男子選手の中では小柄ながら、東京・パリと2大会連続でオリンピックに出場し、ネーションズリーグでは銅メダルと銀メダル獲得に貢献した。
関田は替えの利かない、唯一無二のセッターと言えるだろう。トスの正確性はもちろんだが、他の選手には見られない3つの特徴がある。関田のすごさは、トスそのものだけでなく、ボールに触る前の情報処理だ。
- 相手ブロックを見てから配球
- 的を絞らせないセットアップ
- 読みと反応が鋭い守備力
バレーボール未経験者にはわかりづらい、細かいプレーにこそ関田の魅力が詰まっている。本記事を読むと、関田の技術が論理的に理解できるようになるだろう。セッターの仕事は、正確なトスを上げるだけではない。相手ブロックを遅らせ、スパイカーが打ちやすい状況を作ることも重要な役割だ。
相手ブロックを見てから配球

関田のトスワークで注目なのは、トスを上げる直前にボールから目を切って、相手ブロックを確認する動作だ。
レシーブが上がった瞬間、関田はボールだけを見ているわけではない。一瞬だけ相手コートに目を向ける。ブロッカーがどこにいるのか、誰がマークされていないのか。その情報を瞬時に取り込んでから、トスを配球する。
例えば相手のミドルブロッカーがBクイックを警戒していたら、反対のライトにトスを配球して、ブロックを1枚にする。つまり「自分が上げたいところに上げる」のではなく、「ブロックがいないところに上げる」という発想だ。
柳田将洋(東京グレートベアーズ)との対談で、関田はこう語っている。「上げる前に見ているのは主にミドルブロッカー。プラス間接視野で相手のライト選手がヘルプに来ているかとか。実際に上げたあとの反応速度とかも、意識して見るようにしている。アタッカーの得意コースも含めて、組み立てている感じ。」
このことから、関田はトスを上げる直前で相手ブロックの情報を得てから、トス配球を考えているようだ。言葉にすると単純だが、上がったボールから1度目を切るのだけでも難易度は高い。そこからどこに上げるかの一瞬の判断力も必要になる。相手ブロック目線だと、見られていること自体がプレッシャーとなり、迷いを生じる要素となるだろう。
関田はボールだけでなく相手を見ている。トスの正確性だけでなく、どこへ上げるべきかを決める技術が高い。
的を絞らせないセットアップ

関田のセットアップは、相手ブロッカーからすると的を絞りづらい。
セッターの配球は、体の向きやボールを捉える位置によって、ある程度どこに上げるか読めることがある。例えば少しネットから離れた状態で、背中がライト側を向いていれば、トスはライトに配球されることが多い。しかし関田は同じフォーム、同じ体勢からトスを上げるため、最後の最後まで相手ブロッカーに読ませない。
関田のセットアップには3つのポイントがある。
- ボールの落下地点に入るまでの速さ
- レフトを向いてのトス
- ボールを捉える一瞬の間と一定のフォーム
ボールの落下地点に入るまでの速さ
関田はボールの落下地点に入るスピードが、他のセッターと比較すると段違いに速い。極端ではあるが、他の選手がアンダーでいく場面でも、関田はオーバーでトスを上げられるイメージだ。
落下地点に入るスピードが速いと、トスの安定性と攻撃の幅につながる。片足で飛んでトスを上げると、体が流れてトスも乱れる。一方で両足で飛んでトスを上げると、下半身が土台となり軸があるので体がブレずトスは乱れにくい。落下地点に早く入りジャンプトスすることで、攻撃の選択肢が広がり、相手ブロックに的を絞らせにくくなる。
レフトを向いてのトス
関田は多くの場面でレフトを向いた状態でトスを上げる。例えばコートの中央にボールがあったケースを考えてほしい。多くのセッターはライトにトスを配球するとき、背中をライトに向ける。一直線上になるため上げやすいが、相手からは読まれやすい。しかし関田は、レフトを向いた状態で、斜め方向のライトへトスを配球する。
レフトに上げられる状態からライトへ配球するため、相手からすると「どっちに上げるかわからない」のだ。
ボールを捉える一瞬の間と一定のフォーム
関田はボールを捉える瞬間に一瞬の間がある。ボールを触ってから離れるまで、多くのセッターは「ピッ」っと短く弾くが、関田は「クンッ」と一度手に吸収してから押し出すようなイメージだ。
実は、この一瞬の間があることで、相手ブロッカーからすると、どこに上げるかわからない脅威となる。 引き付けてライトにトスを配球すれば、ギリギリまでどこに上げるかわからない。
さらに関田は、配球するのがレフトでもライトでもボールを捉える位置が一定だ。セッターがライトにトスを上げる際、頭の真上でボールを捉えると上げやすい。しかしフォームが変わるので、読まれやすくなる。ところが関田は、レフトへ上げるときのフォームのまま、ライトへ上げるのだ。おでこの前でボールを捉えながら、手首の力でライトへ配球する。
ボールの落下地点に早く入り、ジャンプトスができる状態を作れる。 体はレフトへ向けたまま、ライトにもトスを上げられる。どこに上げるにも一定のフォームで、ボールを引き付け的を絞らせない。これらのことが、関田のトスが読まれにくいと言われる要因だ。
的確な読みと強打への反応が速い守備力

関田のうまさはトスだけでなく、守備力にも定評がある。
相手セッターのツーアタックを読み切り素早く移動したり、相手からの強烈なスパイクに反応して、味方のいる位置に上げられる。関田は、相手が打つ前の準備が速い。相手セッターの体勢、アタッカーの助走、味方ブロックの位置を見て、打たれるコースを予測する。強打を受けてから反応するのではなく、打たれる前に半歩動いている。そのため、速いスパイクにも体が間に合う。とくにツーアタックへの対応には、セッターならではの読みが表れる。自分自身がセッターだからこそ、相手がツーを選びたくなる場面や間合いを理解している。
柳田将洋(東京GB)との対談で、関田はこう語っている。ディグが得意だし好きだからリベロをやってみたい。自分がセッターだからこそ、ツーアタックを決めたい場面やタイミングがわかるから、絶対に落としたくない。
山本智大や小川智大といった世界トップクラスのリベロ、石川祐希や髙橋藍のサーブレシーブが注目されることは多いが、関田も日本のディフェンス力を体現する1人だ。相手の強打に対しても怯まず、ボールを落とさないだけでなく、拾ったボールを味方が打てる位置にコントロールする。攻撃の組み立てに目が行きがちだが、守備でもチームを支えているのが関田だ。
関田のうまさは「ボールに触る前」にある
本記事では、日本代表セッターである関田のうまさについて解説した。
関田のうまさを一言でまとめると、ボールに触る前の準備力だ。相手ブロックの位置を見る。味方スパイカーの助走を見る。相手が何を警戒しているかを読む。その上で、最も得点につながる選択肢を選ぶ。
派手なスパイクやサービスエースのように、わかりやすく会場を沸かせるプレーではないかもしれない。それでも、関田のワンプレーが相手ブロックを遅らせ、スパイカーを楽にし、日本の得点を生み出している。相手を見て味方を生かし、守備でも貢献する司令塔。日本バレーの強さを支える唯一無二のセッターだ。




