2026年のネーションズリーグで、男子日本代表は開幕8連勝。予選ラウンド第2週ではイラン、アメリカ、フランスとのフルセットをすべて制し、参加18チーム中1位で予選ラウンド最終週を迎えている。
2023年に銅メダル、2024年に銀メダルを獲得しており、すでに世界でも結果を残してきた。世界の強豪国よりも高さで劣る日本が、なぜ海外勢と互角以上に戦えるのか。強さの秘密を5つのポイントで解説する。
- ボールが落ちないディフェンス力&2本目のつなぎ
- 海外移籍&SVリーグで世界基準のプレー
- 誰が出ても強い選手層の厚さ
- 多彩な攻撃パターン&個々の攻撃スキル
- 相手に的を絞らせないトスワーク
ボールが落ちないディフェンス力&攻撃につなげる2本目

日本代表の強さの土台は、ディフェンスにある。
試合を見ていると「なんでそれを上げられるんだ」というシーンが何度もある。相手の強烈なスパイクに反応したり、コート外に飛んだボールを追いかけて攻撃につなげる。日本のディフェンス力は、個人スキルとチーム戦略が組み合わさっている。
リベロの小川智大と山本智大は「日本には世界最高のリベロが2人いる」と評価されるほどの選手だ。石川祐希や髙橋藍は、海外クラブでリベロの経験があり個人レベルでのディフェンス力は間違いない。
そしてチーム戦略として注目なのが、ブロックとレシーブの連動だ。ブロックがクロス側を塞げば、レシーバーはストレートに構える。ブロックでコースを限定し、空いたスペースにレシーバーが入る。この連携が、世界トップクラスの精度で機能している。とくにリベロの小川と山本は、ブロックで空けたコースに的確にポジションを取り、強烈なスパイクを打たれても反応して上げられる。
さらに重要なのが、2本目のつなぎの質である。強打を拾ったボールがコート外へ飛んだとき、ただコート内に返すだけでは相手にチャンスボールを与えるだけだ。しかし日本は、苦しい体勢からでもスパイカーが打てる位置までボールを持っていく。これにより、相手からすれば「どれだけ強く打っても返ってくる」「しかも攻撃で返ってくる」という精神的なプレッシャーとなる。
海外移籍とSVリーグの「世界基準」

日本代表が世界と互角に戦える背景には、所属クラブで世界基準でプレーしていることがある。
石川は10年以上イタリアでプレーし、2026-27シーズンはトルコリーグのジラート・バンク・アンカラへ移籍。髙橋藍と小川はポーランドリーグのルブリン、大塚達宣はイタリアのミラノでプレーする。西田有志・宮浦健人・甲斐優斗も、海外クラブでの経験がある。代表に合流する前から、世界トップレベルの選手を相手に戦い続けている。常に国際大会で相手にするような選手と戦っており、海外勢の高さやスピードに慣れている状態だ。
一方、国内のSVリーグも世界基準に近づいている。大阪ブルテオンのアントワーヌ・ブリザールやミゲル・ロペス、東京グレートベア-ズのバルトシュ・クレク、ジェイテクトSTINGS愛知のトリー・デファルコやステファン・ボワイエなど、世界レベルの選手が在籍している。日常的に対峙することで、国内組の選手も世界の高さとパワーを感じながら成長できる環境がある。
海外組は常に世界を相手にして、国内組はSVリーグで世界クラスの外国人選手と戦う。国際大会だけ世界を相手にするのではなく、所属クラブでも世界基準でプレーできていることが、日本代表の強さにつながっている。
誰が出ても強い選手層の厚さ
現在の日本代表は、出場する選手が変わっても強い。アウトサイドヒッターには石川と髙橋藍だけでなく、大塚、富田将馬、甲斐がいる。守備の富田、高さと攻撃力の甲斐、攻守のバランスに優れる大塚。それぞれの特徴が異なるため、選手のパフォーマンスや試合展開に応じた交代ができる。
選手層の厚さがあらわれたのが、VNLのフランス代表戦だ。
第1セット、サーブレシーブを崩されて19-21とリードされた日本は、大塚をリリーフサーバーとして投入。大塚のサーブから得点を奪い、22-22まで追い付いた。さらに2セットを先取された後の第3セットでは、西本圭吾をスタートから起用。途中出場した富田が安定したサーブレシーブでサイドアウトにつなげると、最後は西本が相手のクイックをブロックして25-17でセットを奪った。日本はそのまま逆転し、フルセットでフランスを下している。
選手を交代しても戦力が落ちず、むしろ異なる強みで流れを変えられる。試合数が多い国際大会やフルセットの試合で、強みとなっている。
多彩な攻撃パターン&個々の攻撃スキル

日本の攻撃は、単純な高さ勝負ではない。ミドルのクイック、レフトやライトへの速いトス、中央からのバックアタック、さらにバックアタックモーションからのフェイクセット。石川や髙橋藍が得意とするプレーは、ブロッカーに「跳ぶか跳ばないか」の迷いを与える。
2026年VNLのスロベニア戦では、深津英臣が積極的にセンターラインを使い、25-16でセットを奪った。セルビア代表戦でも、安定したサーブレシーブから小野寺太志のクイックと石川のバックアタックを組み合わせ、試合の主導権を握っている。
サーブレシーブが乱れた場面でも、個々の技術が攻撃を支える。たとえば石川はサーブレシーブが乱れて、十分な助走が取れず、相手の2枚ブロックが完成している状況でも、ブロックの指先を狙う、ボールの勢いを落として空いた場所へ打つなど、得点へ変える技術がある。西田の重いスパイクとサービスエースは相手コートの守備を破壊する。髙橋藍は攻守にわたるオールラウンダーとして、攻撃だけでなくサーブレシーブでもチームに安定をもたらす。
速いコンビが使える場面では組織力で崩し、苦しい場面では個人技で得点する。どちらの状況でも、得点につなげられる攻撃力が日本の強さだ。
相手に的を絞らせないトスワーク

日本の多彩な攻撃を成立させているのが、セッター陣のトスワークだ。
2026年のネーションズリーグでは、深津がメインでトスを上げ、控えには永露元稀がいる。深津は、レシーブが乱れた苦しい体勢からでもトスの精度を落とさない。ボールの落下地点に素早く入り、半身の状態からでも安定したトスを上げる技術がある。ボールを触るハンドリングが良く、相手に読まれないボールタッチでブロックを迷わせる。永露は途中出場が多いなか、一緒にコートに入る宮浦を効果的に使い、高さを活かしたブロックでチームに貢献している。
そして長年にわたり日本の攻撃を牽引してきたのは、関田誠大だ。175cmと男子選手のなかでは小柄ながら、東京・パリと2大会連続でオリンピックに出場し、日本の司令塔としてチームを支えてきた。関田のうまさは「ボールに触る前の情報処理」にある。トスを上げる直前にボールから目を切り、相手ブロックの位置を確認してから配球する。さらに、レフトを向いた体勢からライトへトスを出す独特のセットアップで、最後の最後まで相手に的を絞らせない。さらにレシーブがネットから少し離れてもミドルを使う。相手のミドルブロッカーは中央を無視できず、サイドへの移動が一歩遅れる。その遅れによって、石川や西田が1枚のブロックで打てる状況が生まれる。
日本の攻撃を支えるのは、相手ブロッカーを迷わせるセッターのトスワークである。関田・深津・永露、異なるタイプのセッター陣の選手層が日本の強さの要因だ。
日本代表はすでに世界トップレベル
日本代表が海外勢と互角に戦える要因は、おもに5つだ。
- ディフェンス力&攻撃につなげる2本目の質
- 海外移籍&SVリーグでの世界基準
- 誰が出ても強い選手層の厚さ
- 多彩な攻撃パターン&個々の決定力
- 深津・関田・永露のトスワーク
2026年ネーションズリーグ開幕8連勝は、日本の強さを示している結果だ。7月15日からは大阪での日本ラウンドが控えている。イタリア、カナダ、ベルギー、アルゼンチンとの対戦。決勝ラウンドを決められるか、そしてメダル獲得なるか、世界を相手に戦う日本代表を応援しよう。




