ネーションズリーグ(VNL)2026第2週イラン戦の最中だった。スタンドからの声援に異変を感じた山本智大が、アップゾーンで西本圭吾に話しかけた。
「なんか応援の声に違和感がある……。『ニシモト』って応援してる人たちがいるぞ」
まさか、と思って西本がスタンドを見ると、“NISHIMOTO”と書かれたカラフルな紙を持った青年たちが「ニシモト、ニシモト」と声を張り上げていた。

スペインのバレーボールクラブに所属する青年が、東レアローズ静岡に所属していた西本(現在は広島サンダーズ)の映像を見た際、ハイレベルなプレーや闘志あふれるパフォーマンスに魅了されてファンになり、今回フランス・オルレアンで開催されたVNLまで、仲間と一緒に国境を越えて駆けつけたという。
西本は、ミドルブロッカーとしては国内でも決して大きくない身長188cmだが、豊富な運動量と最高到達点355cmの跳躍力、鍛え上げた両腕で堅いブロックを形成し、2024-25シーズンはSVリーグでブロック賞を獲得。何より、得点を決めた際に鬼のような形相で雄叫びをあげ、チームを鼓舞する姿は唯一無二だ。
そうしたプレーやパフォーマンスで、バレーボールだけが共通点の遠い国の若者の心を動かし、会いにこさせてしまうなど、奇跡のような話。だが、イラン戦でその声援を聞いた西本は、彼らがやって来たいきさつなど知らなかったため、嬉しさよりも戸惑いのほうが大きかったという。
「最初は恥ずかしかったです。試合に出ていないのに、なんかめっちゃ応援してくれていたから、『うわぁー、めっちゃ恥ずかしいな』と思った。でもありがたいなって」
西本は第1週の中国ラウンドから16人の登録メンバーには入っていたが、リザーブに回る試合も多く、チームが連勝を続ける中、ただ一人、まだ出場機会がなかった。
「僕以外、全員出ていた。僕は14人に入っても、出場せずにまたリザーブに外されることもあった。事実上、戦力外のような状態だったので……。でもそれはまあ現実として仕方がない。自分に実力がないだけの話かな、と毎日考えながら。すごくしんどかったし、すごく長く感じましたね」
その翌日のアメリカ戦で、西本に初めて出場機会が訪れた。セットカウント1-1で迎えた第3セットの6-10の場面でコートに入ると、それまでの鬱憤をぶつけるかのように、いきなりクイックを決めて吠えまくり、コートに火をつけた。接戦となった第4セットは、終盤、西本のブロックで抜け出すと、一気にリードを広げてセットを奪い、フルセットの末に勝利した。

「いつ出てもいいように準備はしていたので、途中から入った時も緊張はなく。ある意味、見せつけてやるぞじゃないですけど、『自分の存在を証明するぞ』という気持ちでコートに立ちました。周りを鼓舞はしているんですけど、マインド的には落ち着いてプレーできていた。自分がやるべきことを冷静に頭に入れて、周りと円滑にコミュニケーションを取ることで、コートに会話を生んで、チームとして戦うということを、繋ぎ止める部分も自然とできていたかなと。それは意識的にやっていました」
翌日のフランス戦も、西本は途中から出場し3本のブロックポイントをあげるなど、2セットダウンからの逆転勝利に貢献。
スペインからやってきた西本の応援団は“西本ボーイズ”としてSNSなどで大きな話題になっていたが、彼らはフランス戦も観戦し、西本の活躍に狂喜乱舞した。試合後、西本はシューズにサインをし、彼らに手渡した。
「なかなかないことだと思いますし、彼らも遠いところから来てくれたので、何か応えたいなと思って。つたない英語ではありますけど、『感謝してます。応援ありがとうございます』と伝えたら、めちゃくちゃ興奮していましたね(笑)。『めっちゃ応援してます』と言ってくれました」
奇跡の出会いと声援を力に変え、西本は15日に開幕する第3週大阪ラウンドに臨む。




