[写真]=李正洋

 2025-26シーズンSVリーグ女子は、SAGA久光スプリングスの優勝で幕を閉じた。

 昨シーズンの女王・大阪マーヴェラスに2連勝したファイナルの後、SAGA久光の中田久美監督に、「マーヴェラスで特に決めさせたくなかった選手は?」と尋ねると、こう答えた。

「みんなに決めさせたくはないんですけど、チームの軸となるのはやはり林(琴奈)選手、田中(瑞稀)選手だと思っていましたので、そこにサーブで負荷をかけていった。崩れなくても、パス(サーブレシーブ)した後の(スパイクの)効果率が非常に低かったというところでは、攻め続けていたことが大きかったと思います」

 まさにその2人、田中キャプテンと林が大阪MVの強さの源だった。守備が堅く、攻撃では多彩な技で得点を重ね、勝負所を熟知している仕事人。特にチャンピオンシップに入ってからはギアが一段上がり、プレーには凄みさえ漂っていた。

 林は今季、レギュラーシーズンではスパイクに苦しみ、「少し打つのが怖くなる部分もあった」という。しかしチャンピオンシップに向けては修正し、クォーターファイナルではスパイクの音が明らかに違っていた。

「肘が下がって体が傾いて、ブロックに当たりやすくなっていたのをコーチに指摘されたので、まずしっかり左手を(打つ前に上げることを)意識して、軸をぶらさずに、高い打点でラインにもクロスにも打てるように、ということをやってきました。それと助走。私はパワーでブロックを飛ばせるタイプではなく、助走のスピードで、しっかり勢いと高さを出して打っていくところが自分の良さだと思うので、そこを意識してやっています」

 田中も明らかに状態が上がり、幅広いコースに打ち分けたり、多彩な技を駆使して得点を重ねた。特にここぞという場面を決して逃さない、持ち前の勝負強さを存分に発揮した。

 年々勝負強さが増している理由を聞くと、田中は笑いながら言った。

「『ま、どうにかなるっしょ』ぐらいな感じで考えられるようになったのが意外といいのかなと思います。本当にここ最近、1、2年の話なんですけど」

 大きかったのは、苦境を跳ねのけた経験だった。昨季のSVリーグでは、デンソーエアリービーズとのセミファイナルで初戦を0-3で落としてから、2連勝してファイナルに進出し、優勝。昨年末の皇后杯決勝では、NECレッドロケッツ川崎に、第5セット11-14とマッチポイントを握られてから逆転勝利を収めた。しかも最後は田中の連続得点で締めくくっていた。

「土壇場から巻き返して勝てた試合を経験できたからこそ、それが自信になっていると思うので、経験できてよかったです」

 今季のチャンピオンシップ・セミファイナルでは、雪辱を期すNEC川崎を相手に、攻守ともに盤石な大阪MVが1セットも失うことなくファイナル進出を決めた。あまりに圧倒的な勝利に、リーグ2連覇が見えたかに思えた。

 だがSAGA久光がそうはさせなかった。中田監督が明かしたように、2戦を通じてサーブで徹底的に田中と林を狙い続けた。特に田中は第1戦で42本、第2戦では34本のサーブを取らされた。

 田中はSAGA久光のサーブについて、「前後に揺さぶられたり、肩口に強いサーブが来て、エンドライン方向に下げられたので、そこから攻撃に入るテンポとかが多少難しくなったところはある」と語った。

 それでも第1戦では45.7%というアタック決定率を残して奮闘し、試合をフルセットに持ち込んだが、第2戦では、さらに徹底されたSAGA久光のサーブと、しつこいリードブロックやディフェンスに苦しめられた。

 第2戦は、SAGA久光のミドルブロッカー荒木彩花が、「自分たちの得意とするブロックとディフェンスの関係性というところで、今までの中でトップを争うんじゃないかというぐらいいい形ができた」と語るほどブロックディフェンスがハマった。

 荒木と対角を組むミドルブロッカー平山詩嫣はこう振り返った。

「ブロックは一番最初に相手と対峙する場所なので、そこが迷うと後ろ(ディグ)も迷うんだというのが、昨日(第1戦)の反省としてありました。だから今日はみんなに『もう絶対迷わない』と宣言した。相手のレフト攻撃は、やっぱりテンポが速くて技術がある。自分はセッター横(のブロック)なのでギャップが生まれやすいから、少しでも間を閉めてコースを絞れるようにするので、後ろに入ってほしい、トータルディフェンスで抑えようという話をしていました」

 チャンピオンシップMVPに輝いたリベロの西村弥菜美は、田中や林がブロックの指先に当てて飛ばしたボールを追い、コートエンドを駆けずり回って拾いまくった。

「高いブロックに対する得点の取り方をすごく知っているのが林選手や田中選手。そこを防ぐポイントとしては、ブロックがしっかりタッチを取ってくれたところをいかに走って取るか。私は後ろにしかいない分、そこでハードワークしなきゃいけない責任がある」

 3セットの中に、ハイレベルな攻防が凝縮されていた。

 田中は、「相手は高さもあるチームですし、ミドルブロッカーの選手が本当にしつこくタッチを取りに来るので、それだけで嫌だし、自分たちが打つコースのデータもしっかり取られていて、そこにも人がいる、という感覚で、すごくやりにくさがあった。打っても打っても決まらないなというのは、相手がすごかったところです」と相手を称え、こう続けた。

「あとは、自分の中で、ちょっと気持ちが先行しすぎたところがあった。『打ちたい』『決めたい』と思いすぎて、いろんな技を出すことが、今日は少なかったかなというのが自分の反省点です」

 悔しい敗戦後にも関わらず、冷静に敗因を分析し、言葉にして伝える姿に改めて胆力を見た。その奥に、「来年、この舞台で必ずやり返す」という強い決意がにじんでいた。

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この記事を書いたのは

米虫紀子

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