186cmの高さと鉄腕から叩き出される豪快なスパイク。激しい闘志をみなぎらせ、チームを奮い立たせるーーー筆者がイタリアで見ていたカミーラ・ミンガルディは、そんな印象の選手だった。しかし日本では、Vサインや手でハートを作り、愛くるしい笑顔を振りまくキュートな一面を見せる。17歳から10年以上もセリエAで活躍した彼女が日本に移籍した理由はなんだったのか、イタリアと日本の違い、そして将来の夢は? チーム通訳との旅行で訪れたフィレンツェと、数日後に改めてオンラインで話を聞いた。
イタリアの子供が始めるスポーツは、男子がサッカー、女子がバレーボールが一般的だ。8歳の時に自然にバレーボールを始めたカミーラ少女はメキメキと頭角を現し、14歳の時にベルガモのアンダーカテゴリーにスカウトされる。そこからは親元を離れてクラブの寮から学校に通い、若干16歳でセリエAデビュー。「同じ環境にいては成長は止まってしまうし、常に新しい場所に挑戦したくなるのは私の性分かな」と言うように、それからずっと1〜2シーズンごとにチームを転々とした。
そして2025年に念願の日本へ。「この3年くらいずっと、独特の文化に興味があって日本に旅行で行きたかったんです。旅行だけでなくバレーボールができたらと思い、外国に行くなら日本だけとエージェントにも伝えていました」。それゆえ、ヴィクトリーナ姫路への移籍は願ったり叶ったり。大好きなピンクがチームカラーだったという偶然に、「これは絶対に運命だ!と嬉しくて」と当時を振り返る。

「想像以上に日本の方々は礼儀正しくて、とても優しくて。イタリアも優しい人が多いですが、日本はそれが文化の域であると実感しています。誰も知ってる人がいないし、日本語も分からないので不安でしたが、すぐにホームだと感じることができました」。日本語の予備知識はゼロ。しかしチームの通訳から教えてもらったり、覚えた単語を積極的に使ったりしながら、また持ち前の明るさとオープンな性格もあってコミュニケーションに大きな問題はない。好きな言葉は「ダイジョウブ」。いつもポジティブなミンガルディらしい言葉だ。
そんなミンガルディがチームメートやファンを魅了するのに時間はかからなかった。「日本のファンのことが大好き! イタリアでは場をわきまえてくれないファンもいますが、日本のファンはとても礼儀正しく、選手へのリスペクトを感じます。ドラえもんなど私の好きなものを覚えてくれていて、いつも “オミヤゲ” をくれるんです」と喜びを隠さない。
バレーボールで感じた違いは、これまでもよく言われてきたように “欧米のフィジカルなバレーに対し、日本のバレーはテクニカル” 。それ以上にミンガルディは、練習内容やメンタル面での違いを強調する。
「イタリアでは 短い練習時間をいかに集中し、いかに質の高い練習をするかにフォーカスしています。決められた時間や回数でやり遂げないといけない制約があるため、自然とレベルが上がります。実際にイタリアは世界ランキング1位ですから、練習と試合でのパフォーマンスとの効果バランスが優れていると言えますね」
“質” のイタリアに対して、日本は “量” 。日本は自主練を含めて練習時間が長く、基礎練習を繰り返し行う。その裏には、日本人選手特有の「良い感触をもてているか」というメンタルがある。それをしっかり感じられるまで、何度も何度も繰り返すのに驚いたそうだ。
その一方で、「練習でも運営においてでも、全員がやるべきことに100パーセントの力で向き合うのは素晴らしい。イタリアでは時に表面的に済ませたりもするので・・・日本のメンタリティとイタリアのクオリティがミックスできたら完璧なのにね」と付け加えた。

選手と監督との距離も違う。イタリアでは監督や目上の人へのリスペクトはあるけれど、意見はしっかりと言い合える環境だ。コートを離れると一緒にコーヒーを飲んだり、雑談をしたりもする。「日本は組織全体が縦社会」と感じるが、姫路の場合は監督がオランダ人なので、選手との関係はイタリアとそれほど変わらないそう。ただミーティングで若い選手の発言を聞くことがないので、「勝つという共通目標に年齢は関係ないのだから、もっと積極的に話し合いに参加すべき」。こう苦言を呈しながらも 「イタリアでは序列が崩れすぎる時もあるから、ここもミックスできればいいのに」と残念そうに言った。
もうひとつ驚いたのは、日本のバレーボール選手の多くはバレーボール一筋の人生を送ってきていること。「バレーボールが好きでそれを職業としていても、プライベートも同じくらい大事」とは、ミンガルディ以外のイタリア人選手からもよく聞く言葉だ。
「彼氏はいるかと尋ねても、『ヒミツ』と言って教えてくれないの」と。イタリアでは彼氏彼女と熱いキスを交わす写真もSNSに投稿するほどオープンなので、その気持ちも分からなくはない。そんな違いを感じつつも、「コミュニケーションが大事だと思ってるので、チームメートとも積極的に出かけますよ。みんなが連れて行ってくれたボーリングは楽しかった! 誰が誘うのかって? ほとんどが私です」。コート内だけでなく、コートの外でも “カミーラ旋風” を巻き起こしているようだ。
1シーズン中に5回も来日した恋人とはもちろん、1人でも臆せずあちらこちらに旅に出る。お気に入りは京都と金沢で、沖縄の海の美しさも格別だった。これから行ってみたいのは北海道と九州だそう。
日本の食事も大好きで、一番好きなものを尋ねると「ヤキニク!」と即答。肉はイタリアにもあるが、薄切り肉にタレをつけること、何より皆で焼きながらシェアするというイタリアにはない食文化が気に入っている。「イタリア料理よりも和食が好き。和食のほうが断然ヘルシーですから。こっちに帰ってきてイタリア料理を食べすぎてるので、太らないためにも日本に行って和食を食べないと」と言ってガハハ、と笑った。

姫路で2年目となる2026-27シーズンでは、チームとしての目標は決勝進出。個人としては、昨季は個人得点ランキングで4位となり「けがで1か月休んでなければ」と悔やんだ得点女王を狙いにゆく。その後のキャリアについては「最低でもあともう1年、日本でプレーしたい」と2027-28年まではSVリーグ残留を強く希望した。
その後はイタリアでプレーするつもりですか?と尋ねると、意外な答えが返ってきた。「どうかな、近いうちにはマンマになりたいから」。イタリアでは一般的に家族の仲が良いが、大人になっても一緒に旅行に行くほどミンガルディ家は強い絆で結ばれている。彼女が自分の家庭を持ちたいと思うのも自然なことだろう。
実際どうなるのか今は知る由もない。まずは「優秀な外国人選手が増えてさらにレベルが上がる」と期待するSVリーグで迎える2季目、5000人収容の新しいホームアリーナで、いっそう強く熱く輝きを増す “姫路の太陽” の活躍を期待したい。




