西田有志ほど「ストイック」という言葉の似合うアスリートはいない。彼は9月13日夜に福岡県北九州市でアジア選手権決勝を戦い、日本代表がLA28(ロサンゼルスオリンピック)出場を決める場にいた。翌14日は飛行機で東京に飛び、記者会見に出席している。15日はスポンサーへの挨拶回りなどで、チームの「顔」としての役割も果たした。
そこから家族旅行などの「オフ」を取れたのは2泊ほど。18日の金曜日からは専属トレーナーとともに、個人合宿をスタートさせていた。
「昨年もやっていたようなものですが、よりクオリティの上がった、また新しいセッションです。ほとんどスプリント系でした。あと『どういったところを今シーズンは鍛えていくのか』という目的決めをしました」
その後、大阪ブルテオンに合流した西田は思った。
「このチーム、代表出し過ぎやな」
アジア大会のメンバーには甲斐優斗、西山大翔、西川馨太郎と3名のチームメイトが入っていた。伊藤健士アナリスト、永野健コーチも代表に帯同していた。さらに外国籍選手もそれぞれが代表活動に参加していて、普段よりかなり人が少ない状態だったという。
とはいえ西田の取り組みは不変だ。「2年後の五輪に向けて」を問われた彼は、こう語り始めた。
「ロスで結果を残すためにというよりも、まず自分がその一日に何を成し遂げるか目的を持ってやっていった結果がロスだと思います。自分が強くなるために努力するだけですし、チームを勝たせたいから努力するためだけ。それはいつまで経っても変わらない意識です」
26歳の西田は日本を代表するオポジットで、186センチという(バレーボール選手、特にオポジットとしては)かなり低い身長であれだけのパフォーマンスを見せていることは驚異的な現象といっていい。ただ、彼自身はさらなる成長に対してなお貪欲だ。
彼のバレーボール論は、この競技への理解が浅い人間にとっては時に難解だが、一方で深い思考や示唆を含んでいる。
「得点の取り方を理解し始めたら、得点を取れるじゃないですか。それをいかに理解した状態で次のステップに行けるかが現段階なので、まだまだです。僕はまだバレーボールを知ったぐらいです。でもそこから次は上にもう一つ積み上げられるか?という段階です」
大阪ブルテオンは昨季のSVリーグ王者だ。ライバルのサントリーサンバーズ大阪はドミトリー・ムセルスキー、髙橋藍という主力中の主力がチームを去った。
SVリーグの用意したビジュアルを見れば、大体は西田選手が「センターポジション」に入っている。本人がそれを望むか、望まないかは別にして、彼は2026-27シーズンのSVリーグを背負う存在だ。
「リーグを背負う意識」について尋ねると、彼は少し話を拡げて自論を語り始めた。
「今年はオン・ザ・コート(=外国籍選手の同時起用)が3人になりました。去年と何が比較できるのか?と言っても、まったく別物ですよね。各チームの戦い方も絶対に変わってきます。それに対してどう僕らがアジャストするのか、どう向き合っていくのかになると思います。海外選手をよりプッシュをしていかないといけません。でも海外選手が強いから勝つのでなくて、日本人選手がより際立つチームだから勝つと僕は考えています。日本のリーグは、日本人の意識が変わらない限りよくならないなという認識です」
さらにこう続けた。
「答えになっているか分からないですけど、リーグを背負っているからどうというより、僕は僕自身のバレー人生を背負っています。そこの行動に変わりはないかなと思います」
外国籍選手が一人増えることで、大阪ブルテオンのキャプテンとして「外国籍選手と日本人選手が一つのチームとして理解し合い、融合する」状態を作るためのコミュニケーションをより深める必要はあるだろう。そこが彼の口にする「難しさ」の一因だ。ただその難しさに立ち向かうことは、同時にチームと西田のやりがいにもなる。
「そこも楽しみながらやりたいです。もちろん難しいシーズンというのは全員が理解しているはずです。理解している上で何がしたいのか、何をしないといけないのか、どうしたいのかというところまでの、原理原則や理論をしっかりと作り上げたチームで、ステップアップして勝っていくのが目的です。そこがしっかりできてくれば、チームとしても非常にいいものになるし、昨年よりも、より濃い一年になるかなと思っています」
そして西田が一選手として「もう一つ積み上げる」ためのストイックなチャレンジは、今年も地道に続けられる。西田と大阪ブルテオンの「濃い一年」が今から楽しみだ。




