[写真]=Volleyball World

 西田有志のスパイクを初めて生で見たときに、あまりの高さに思わず笑ってしまった。「いや、めっちゃ跳ぶやん!」

 とにかく滞空時間が長い。大袈裟に聞こえるかもしれないが、時間が止まっているかのように感じる。身長186センチの西田が、最高到達点350センチの高い打点から放つスパイクは、バシンという重い音とともに相手コートに突き刺さる。その豪快さは見ていて気持ちが良い。

 そんなスパイクが、2026男子アジア選手権大会でも炸裂している。予選ラウンドのオーストラリア戦ではチーム最多の16得点を挙げ、アタック決定率はチーム1位の82.3%をマーク。インドとの準々決勝では、第3セットの中盤で強烈なバックアタックを決め、会場を沸かせた。そして準決勝の韓国戦でも14本中10本のアタックを決める。第2セットの22-10となった場面では、髙橋藍がスパイクを打つと見せかけトスを上げると、「打つ準備はしていた」と待ち構えていた西田がライトから打ち込んだ。

 さらに、韓国戦では強打だけではないところを見せつけた。持ち味の強烈なスパイクで相手にプレッシャーをかけるからこそ、フェイントが効いてくる。第1セットのファーストプレーで見せたフェイントは「場所が悪かった」と相手ブロックに阻まれたが、「ブロックが流れることは映像を見ていてもよくあった。そこに対して、どういうフェイントの仕方で、どの位置にボールを落としたらいいかを意識することが重要だった」とすぐに修正を図る。その後はフェイントでも得点を重ね、守備ではコートを駆け回って何度もボールを拾い、攻守でチームを支えた。

 決勝はイランを迎え撃つ。予選ラウンドを2位で通過したイランは、準々決勝でチャイニーズタイペイを3-1で破り、続く準決勝ではオーストラリアを3-1で下した。西田は「非常にパワフルで、テクニカルなチーム」と警戒する。「自分たちが優位に立てる試合展開を常に作るために、一つひとつのクオリティを向こうより上げていきたい」

 手強いイランを相手に、西田はサーブでも揺さぶっていくつもりだ。韓国戦はサービスエースまであと数ミリという際どいサーブがあった。ただ、これまでは特定の選手というより、ゾーンのどこを狙うかを中心に考えていたそうで、本人の感覚としては「あまりハマらなかった」という。跳躍力を生かしたジャンプサーブは西田の武器の一つ。時速120キロを超えるサーブは破壊力抜群で、試合の流れを一気に引き寄せる力がある。決勝では「多分、僕は人を狙います」と不敵な笑みを浮かべた。

 決勝トーナメントに入り、会場には独特の緊張感が漂っているが、西田に気にする素振りはない。ゲームの入りで意識していることを聞いても、「特にない」とケロッとした表情で答える。「試合のなかでいろんなことが変わっていくと思うので、一喜一憂するよりも、どうやってよりクオリティを上げていくかということだけをやっている」

 勝てばロサンゼルスオリンピック出場が決まる大一番を前に、西田の口から出るのは、今大会で何度も繰り返している「勝つだけなんで」という言葉だ。オポジットのスパイクやサーブで得点を重ねれば、自ずと日本が優位に立つ。アジアの頂点と五輪切符の獲得を目指し、左腕を豪快に振り抜く。

この記事を書いたのは

VOLLEYBALL KING 編集部

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