“殻を破る”とはまさにこのこと。
今年9〜10月に行われたアジア大会で、オポジットとして全試合に先発出場した西山大翔(大阪ブルテオン)は、バキバキと殻を破る音が聞こえてきそうなほどの進化を見せた。
前衛後衛関係なく、高い跳躍からパワーあふれるスパイクを幅広いコースに叩き込む。特にフルセットの激戦となった準決勝・中国戦は、アタック決定率71.4%という無双状態。3本のサービスエースを含む28得点を叩き出し、決勝進出に大きく貢献した。
大会を終え大阪Bに戻った西山に、アジア大会での収穫を尋ねるとこう答えた。
「まず第一に、自信がついたというのがあります」
自信。それこそ西山に一番必要なものだった。
「いつもはなかなか試合に出られていないんですけど、今回実戦経験を多く積めたことが良かったかなと思います。プレー面では、スパイクのコース幅が広がったと自分でもすごく感じます。チームに戻ってからも、以前は決まらなかったスパイクが決まるようになっています」
西山が大阪Bの前身であるパナソニックパンサーズに入団した時から、元日本代表オポジットの清水邦広(現・大阪Bコーチ)が、「ポテンシャルがものすごい」と羨ましがっていたほど潜在能力は高い。だが以前はどちらかというと力任せで、スパイクの選択肢も多くなかった。だがアジア大会では、ストレートからインナーまで幅広いコースに打ち分け、力を抜いて相手をいなすなど、選択肢の多さも見せた。
コース幅を広げられた理由を聞くと、「言い方が難しいんですけど……トスが伸びてくるというのを信じすぎずに助走に入るようにしたんです」と明かした。
大阪Bでは、左利きの西田有志がファーストオポジット。セッターは日頃、サウスポーに合わせてライトへのバックトスを上げるため、右利きの西山が入った時にも、どうしてもトスが短くなる場合がある。今年の日本代表でも、B代表のセッターだった河東祐大(ジェイテクトSTINGS愛知)が8月にA代表に招集され、アジア選手権で西田、宮浦健人(ウルフドッグス名古屋)というサウスポーのオポジット2人とコンビを合わせていたため、アジア選手権を終えてアジア大会のチームに合流した際、トスが短くなるケースがあった。西山はこれまでトスが短くなった場合の対処に苦心していた。そこでいっそトスが短くなるケースを基準にして、内側に助走に入るようにしたことが功を奏し、アジア大会での爆発につながった。
「これまでより内側に助走を取るようにしたら、クロスに切れるようになったし、ボールの下にちゃんと入れることによってラインにも切れるようになった。トスが伸びてきた時にも、自分は右利きなので、少しブロードのような感じで入れば対処できる。どのセッターも、ライトトスが長すぎるということはあまりないと思いますし」
内側に切り込んで打ち込む強烈なクロススパイクは新たな武器となった。
大阪Bのトーマス・サムエルボ監督も、「アジア大会でのヒロトは非常に素晴らしかった。多くのスパイクを決めて、それによって自信をつけて帰ってきてくれた。シーズンは長く試合数も多いので、全員が必要。オポジットにはニシダがいますが、ヒロトが成長してどんどんニシダに近づいていくことは、チームにとっても、ニシダにとってもいいこと。相乗効果を発揮してくれれば」と大きな期待を寄せている。
アジア大会を見ていたという西田も、西山の印象をこう話した。
「シャープになって、楽にやっていたイメージ。非常に心強い味方だなと。でも『成長したな』とは思わない。彼がもともと持っていたのがあれなので、『やっと彼らしくなってきたな』というのが僕の印象です」
そう讃えつつ、「でも僕は負けないっすよ、絶対に」と不敵に笑った。
西山は、大阪Bでの新シーズンに向けてこう語った。
「SVリーグも外国人選手が増えますけど、アジア大会では外国人相手に自分の力が通用したと感じた場面があったので、西田さんの助けとか、チームの助けになるという意味でも、自信がついたなと思います」
「助けになる」という言葉が随分控えめに聞こえたため、「奪い取る」ではないのか、と尋ねた。
「(大阪Bに)戻ってくると、やっぱりスパイクのコースを抜くのも、タッチを取るのも(西田とは)違うし、何より一番は、ディグが全然違うなと感じました。西田さんはリベロ並みに上げるんで(笑)。だから、まだまだトータル的に、奪い取れる技術ではないと思っています。その中でも、サムさん(サムエルボ監督)の評価がちょっと上がっているのは感じるので、試合に出させてもらえるんじゃないかなと。このチームに貢献できるようになってきたのかなとは思います」
自身に今足りないもの、やるべきことを冷静に把握している。
連覇を目指す大阪Bにおいて、昨季出場機会の少なかった西山の飛躍は、チームの大きなプラス材料になるだろう。




