バレーボール男子日本代表の2大エース、石川祐希と髙橋藍。ともにアウトサイドヒッターとして日本の攻守を支えている中心選手だ。
同じポジションでプレースタイルも似ているため、違いがわかりにくいと感じる人も多いだろう。石川の強みは「崩れた状況でも得点につなげる力」にある。一方、髙橋藍は「守備から攻撃の形を作る力」が強みだ。
ただし、石川の守備力が低いわけでも、髙橋藍が決定力で劣るわけでもない。2人とも攻守に優れた選手で、あくまでも強みや得意プレーの違いだ。攻撃と守備の両面から2人を比較し、それぞれの強みを詳しく解説する。
石川祐希|崩れた場面で得点を取りきる力

石川の強みは、トスが乱れた場面やラリーが長引いた場面で、得点を取りきる力だ。
アウトサイドヒッターは、サーブレシーブが崩れたときに「最後の選択肢」としてトスが上がるポジションだ。高いトスが上がるため、相手は万全の状態でブロックしてくる。それでも石川は、手に当ててコート外へ弾くブロックアウト、ブロックの横を射抜くインナーなど攻撃の選択肢が多い。シャットアウトされそうな場面でも、得点につなげられる。
なかでもハイセットのボールを、体をストレート方向に向けたまま、クロス側を抜くスパイクは特徴的だ。ブロックをストレート側に引き寄せ、腕と腰のひねりでクロス側を抜くスパイクを打つのだ。コート外からの高いトスや助走が取れない状態でも打てるのも強み。以下の動画がそのシーンだ。
苦しい場面で頼れるエース。これが石川祐希の強さだ。
髙橋藍|コートにボールを落とさない守備力

髙橋藍の強みは、守備の質の高さだ。
中学時代にリベロを経験しているだけあって、サーブレシーブやディグの技術が高い。安定したサーブレシーブで、攻撃の土台を支える。ディグでは味方ブロックの上から打たれる強打に対しては、打たれる瞬間にレシーブ位置を変更してボールの正面に入る。ブロックに当たってコート外に弾かれたボールにも素早く反応して、追いかけてつなげられるのだ。
さらに、ただボールを上げるだけでなく、攻撃につながるボールを上げる。バレーボールでは、ディグやサーブレシーブの質によって、セッターが使える攻撃の選択肢が変わる。ボールがセッターの頭上に正確に返れば、クイックもパイプもサイド攻撃も使えるのだ。他の選手が上げるだけで精一杯なボールでも、髙橋藍のレシーブは、セッターが動かずにジャンプトスできる位置に返る。こうした質の高い守備が、チームの攻撃の選択肢を広げる。以下の動画がそのシーンだ。
髙橋藍は、守備でチームの攻撃の土台を支えられるアウトサイドヒッターだ。
攻撃の違い|石川はハイセットの打開力、髙橋藍はコースを打ち分ける技術

攻撃面における2人の違いは、サーブレシーブやディグが乱れたときにわかりやすい。
ファーストタッチがセッターへ正確に返れば、中央からの速攻やバックアタックを組み合わせられる。相手ブロックはクイックも警戒するため、サイドのスパイカーは1枚ブロックを相手に打てる可能性が高くなる。一方、レシーブが乱れると速い攻撃を使いにくい。スパイカーへ高く上げるハイセットが多くなり、相手はブロックとレシーブの準備を整えられる。
石川は、誰が打つのかを相手に読まれた状況でも得点につなげられる。レシーブが乱れ、ネットから離れた高いトスが上がった場面がある。相手のブロッカーはサイドへ集まり、完成した状態で石川を待ち構えていた。
石川は無理にブロックの上から打ち抜こうとせず、相手の手の位置を見てスイングを変える。腕や腰のひねりを使ってブロックの横を抜いたり、指先に当ててブロックアウトを取ったりできる。得点が難しければ、ブロックに当てて自陣へ戻し、もう一度攻撃するリバウンドも選択できるのが石川の強みである。
対して髙橋藍は、力だけでブロックの上から打ち抜くのではなく、速いテンポとコースの打ち分けで得点を狙う場面が多い。ブロックとレシーバーの位置を見て、打ち方を変えられるのだ。
例えば、ブロッカーがクロス側へ寄ればストレートへ打つ。ストレートを塞がれれば、角度をつけたクロスへ打ち分ける。ブロックの外側の手が見えれば、指先を狙ってブロックアウトを取る。ロールショットで、コートの真ん中にポトンと落とす打ち方もできる。
相手の手や空いたコースを利用することもできる。高さやパワーだけに頼らず、相手の守備を見て得点方法を変えられる点が髙橋藍の強みだ。同じ得点でも、石川は苦しいトスを得点へ変える力、髙橋藍は相手の守備に応じて打ち方を変える技術に特徴がある。
守備の違い|石川はサーブレシーブからの攻撃、髙橋藍はサーブレシーブとディグの安定性
アウトサイドヒッターは、ボールを上げれば終わりではない。
サーブレシーブをした直後にコートの外へ開き、スパイクを打たないといけないため、守備と攻撃を切り離せない。石川の守備で注目したいのは、サーブレシーブを担いながら、得点源としての役割も果たせることだ。
強いサーブを受けた後でもすぐに助走へ入り、自らスパイクを打つ。レシーブが乱れた場合は、相手ブロックが揃ったハイセットにも対応する。守備をした直後でも攻撃へ戻り、最後は自ら得点を狙える点が石川の強みである。
対して髙橋藍の守備の強みは、予測と反応を生かしたディグだ。
スパイカーの助走や体の向き、味方ブロックが塞いだコースを見て、ボールが飛んでくるコースを予測する。スパイクを打たれてから動くのではなく、打たれる前に準備できているため、強打にも反応しやすい。
予測と異なるコースに打たれても、最初の一歩が速く、体の横や前に落ちるボールへ手を伸ばせる。髙橋藍はアウトサイドヒッターでありながら、予測と反応を武器としたリベロ並みの守備力で、相手に簡単な得点を与えない。
石川はサーブレシーブからの攻撃参加、髙橋藍は広い範囲のスパイクを拾う。ともに守備力の高い選手だが、とくに強みが表れるプレーに違いがある。
まとめ|石川と髙橋藍は苦しい場面で違いが見える
石川と髙橋藍は、どちらかを攻撃型、反対を守備型と単純に分けられる選手ではない。2人ともサーブレシーブ、ディグ、スパイクを高い水準でこなし、日本代表をけん引する選手だ。
ただし強みや得意なプレーが異なる。
- 石川:ハイセットの苦しい場面でも、ブロックアウトやリバウンドで得点につなげられる。
- 髙橋藍:相手ブロックとレシーバーを見て打ち方を変える。守備では相手の攻撃を読み、速い反応と広い守備範囲でボールを拾う。
男子日本代表の試合を見るときは、石川にどのようなトスが上がったのか、髙橋藍が相手スパイカーの攻撃にどう備えているのかに注目してほしい。スパイクが決まった瞬間だけでなく、そこに至るまでのレシーブやトスを見ると、2人の違いがより明確になるだろう。




