地元・愛知開催のアジア大会、山田二千華は静かに燃えていた。
「アジア選手権が終わって、アジア大会に出るチームの合宿が始まった時は、どうやって進めていくべきか。気持ちの切り替えはすごく難しかったです。でも、バレーボール選手としてこんな大きな舞台で日本代表として戦えることは、限りなく少ない、光栄なこと。アジア選手権の悔しさがあったとしても、チームとして次に進んでいくためにも大事な大会なので、1点1点に集中して戦おうという気持ちで臨みました」
準々決勝の台湾戦、準決勝の韓国戦では序盤からトスが集まった。セッターの関菜々巳には序盤、「(相手の)ウィークブロックのところから確実に攻めて決めたかった」というゲームプランがあったが、同じ攻撃ばかりを選択すれば当然相手も対応する。そのためにも前半からミドルの攻撃を多用して相手のディフェンスを分散させたい思惑もあった。
1本で決まらなくても続けて2本目、さらに3本目とトスを上げてきた関に、山田も応えた。
「セッターの目線で『ここはミドルを使いたい』という場面もあると思うし、ミドル側としても『今上げてくれたら決められる』という状況があるので、私もセナに伝えて、いかに楽に点を獲るかということを意識しました。アジア選手権でも同じように上げてくれて、私が決めきれなくてセナにもチームにもすごく迷惑をかけたので、自分が活きるためにも、周りを活かすためにもブロックの状況を伝えて、『行ける』という意志も伝えるように意識しました」
より形になって現れたのが韓国戦だ。サーブレシーブがきれいに返った場面だけでなく、ラリー中もライト側へ移動した攻撃や、セッターの前からの速攻で得点を重ね、チーム最多の和田由紀子に続き、佐藤淑乃と並ぶチーム2位の13得点を叩き出した。
アジア選手権で敗れた後は、悔しさと後悔だけが残った。アジア大会でも決勝は中国にストレート負けを喫し、悔しさと課題は残ったが、次へ向かうための収穫も手にした。山田はそう明かす。
「全部が全部悪かったわけではなく、チームとして組織的に戦うということは短い時間の中でもできたのかな、と思うので、そこまで持って行くためにどうすればいいのか。もっと早く、チームとしての形ができないと、また同じことになってしまうので、どんなメンバーでも同じように。1人1人がやるべきことはもちろんですけど、高さのある相手に自分たちから失点したりミスをしないように、自分にもシビアに戦っていかないといけない、というのを改めて強く感じさせられたので、まずは自分自身も意識を高く持って取り組んでいきたいです」
自国開催というだけでなく、出身地の愛知でのアジア大会には家族や友人も多く訪れた。ラリーで粘って点を獲れば会場からは大きな拍手と歓声が起こり、劣勢時には“ニッポン”コールが起こる。2021年の東京五輪は無観客だったため、“アジア版五輪”と言われるアジア大会で、多くの応援を背にして戦う喜びは格別だった。
「会場の空気感が他のどの大会とも違いました。苦しい場面でも味方がすぐ近くにいてくれる感覚で、応援の力を常に感じながら戦えた。いろんなことが苦しいシーズンでしたけど、最後にこうして日本で大きな国際大会、アジア大会を戦えたことは本当によかった、と心から感じました」
長いシーズンは終わったが、またすぐにSVリーグが始まり、ロサンゼルス五輪出場に向けた戦いへスタートを切る。アジア大会では秋本美空がミドルブロッカーとして活躍し、日本代表として見れば明るい材料になったこと。これからへつながる大きな期待であるのは間違いないが、同じポジションの山田にとっては、この先秋本がミドルとしてプレーするか否かに関わらず、ケガでアジア選手権やアジア大会に出場できなかった荒木彩花を含めたミドルブロッカーのライバルたちとの競争もさらに熾烈さを増していくのは想像に容易い。
その中で、どれだけミドルブロッカーの中心、柱になることができるか。
「もっと自覚を持ってやらないといけない。この大会で、改めて感じたので、自分がもっとしっかり引っ張れるように。次は、そういう存在になりたいです」
悔しさも糧に、日本の壁となるべく、さらなる成長を誓う。




