[写真]=田口有史

 アジア選手権のリベンジと、32年ぶりの自国開催で48年ぶりの金メダルを目指した女子バレー日本代表のアジア大会は決勝で中国に敗れ、準優勝に終わった。

 若手主体の中国に、第3セットは大差をつけた状態から逆転を喫し、万事よし、とは言い切れない悔しさの残る結末となったが、来シーズンのワールドカップでのロサンゼルス五輪出場権獲得に向けて明るい材料もあった。

 20歳、秋本美空の活躍だ。

 昨シーズンに続いて今シーズンも日本代表に選出され、今シーズンはオポジットとして2枚替えで投入されるだけでなく、スタメン出場したアジア選手権のベトナム戦ではチーム最多の16得点を挙げる活躍も見せた。

 目指したアジア選手権での五輪出場権獲得はならず、これからに課題が残る中チーム最年少の秋本にかかる期待は大きい。セッターの関菜々巳や、アジア選手権に出場したベテランの栄絵里香が「美空の高さは日本代表にとってこれ以上ない大きな武器なので、何とかそれを活かす攻撃をしたいとチャレンジしてきた」と口を揃えるように、185センチの高さはもちろん、アウトサイドヒッターやオポジット、高校時代にはツーセッターも経験したことがあり、どんなポジションやプレーもこなす器用さも備える。

 まだまだそれだけでは収まらない、もっと引き出しはある、とばかりにアジア大会ではさらなるサプライズがあった。フェルハト・アクバシュ監督は予選リーグ初戦から、秋本をミドルブロッカーとしてスタメン起用したことだ。

 アジア選手権のメンバーからアジア大会は島村春世、宮部藍梨、2人のミドルブロッカーが抜けたが、山田二千華、SVリーグでもブロックで存在感を発揮してきた山口真季、SAGA久光スプリングスの井上未唯奈、ミドルブロッカーの選手は他にも顔を揃える中、秋本が抜擢された。

 もとをたどれば、共栄学園高でもミドルブロッカーの経験はあり、ブロックの中心となるだけでなく、前衛中央から相手ブロックよりも高い位置から高いトスを打って決める。春高バレーで優勝に導く原動力となったのは、ミドルエースの秋本だったのは周知の通り。その活躍を目にしたアクバシュ監督は「新しいことにチャレンジした」と抜擢の理由に加え、長い話し合いを経て今回の起用に至ったことを明かす。今回の起用で、このままミドルブロッカーに専念させるというわけではないが、新たなチャレンジを「韓国、中国といった強く高さのある国に対してもうまくいく部分が見えた。とてもポジティブに捉えている」と評価した。

 アジア選手権を終え、薩摩川内での合宿からアジア大会まで十分な時間があったわけではない。まずは高さを活かすべく、高校時代と同様にミドルから高いトスを打つ。シンプルな攻撃ではあるが、アジアのブロックに対しては十分以上の効果を発揮した。加えて、準々決勝の台湾戦では、後衛時にもベンチへ下がらずバックアタックに入ったり、2枚替えでミドルブロッカーの山口が投入された時には秋本がオポジットに入るなど、さまざまなパターンに対応してみせただけでなく、光ったのは随所で見せた「ここに落とせば決まる」と確信を持っているようなプレーの数々だ。

 たとえば相手ブロックが2枚揃って、ブロックに当たったボールを拾おうとレシーバーが後ろに下がっているのが見えたら、コート前方へ巧みに落とす。助走してからジャンプをして、空中で身体が向いた方向とは逆に打ち分けるスパイクも何本もあった。

 同世代の選手に聞けば「美空はバレーIQが高い」と言う。秋本自身にたずねると「全然そんなことないです」と笑うが、試合に出れば出るたび進化した姿を見せる。どんな形でも爪痕を残してきたことに代わりはないが、「スタートから出るほうがやりやすい」と言うのは秋本自身だ。

「最初から入る時は相手の情報を全部頭に入れているので、何をするのかわかっているし、情報量が増えてもやるべきことはわかっているからごちゃごちゃにならない。自分には、そういうほうが合っていて、途中からだとうまくいかないこともありました。プレーに関しては、練習から意識することはもちろんですけど、うまくできたこととか、違う決め方とか、試合だからこそできたプレーだな、と改めて感じました」

 最終戦を勝って終わることはできなかったが「チームの雰囲気は悪くなかった」とコートでの表情と同様に淡々と振り返るが、言葉の端々に次への決意もにじませた。

「コートでプレーすること、コートにいることが一番成長できると思うので、これからも任されたポジションで自分のベストを尽くしていきたいです」

 2年後のロサンゼルス五輪に向け、チームに光をもたらした。イタリアでの新シーズンを経て、次はどんな変化や融合を見せるのか。期待は高まるばかりだ。

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この記事を書いたのは

田中夕子

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