5月1、2日に行われたSVリーグ・クォーターファイナルで、東京グレートベアーズに2連勝し、セミファイナル進出を決めたジェイテクトSTINGS愛知の真保綱一郎ヘッドコーチは、セミファイナルで対戦する大阪ブルテオンの“サーブ”を警戒していた。
「強いサーブだけじゃなく、戦術的なサーブも織り交ぜてくるので、サーブレシーブは、アウトサイドとリベロの3人だけではもう対応できない。オポジットやミドルの選手も参加しないとサーブレシーブが崩壊するので、そこは組織立った対応が必要だと思っています」
今季の大阪Bは、もともとサーブ力のあるミゲル・ロペスや富田将馬に加え、エバデダン ラリー アイケーのサーブも好調。何よりセッターのアントワーヌ・ブリザールの加入が大きい。ブリザールはパワー溢れるジャンプサーブから相手の隙をピンポイントで狙うフローターサーブまで、バリエーションが非常に多彩。それを的確に打ち分け相手を翻弄する。
その一方で、サーブと言えばオポジットの西田有志だが、今季のレギュラーシーズン前半は、サーブにおける西田の存在感が薄い印象があった。出力をセーブしているように見え、安定感はあるが、かつて相手チームの選手が「何点リードしていても、西田のサーブで追いつかれるんじゃないかという怖さがある」と語っていたような爆発力が感じられなかった。

だが3月7日の東レアローズ静岡戦が転機になった。大阪Bは2セットを連取するが第3セットを奪われ、第4セットも8-12とリードされていた。
そこでサーブに立った西田は、左腕を豪快に振り抜く。クロス方向に伸びていったサーブは東レ静岡のアウトサイドヒッター・楠本岳の肩口を襲って弾き飛ばし、サービスエースに。2本目は唸りをあげて変化しながらストレートのコ―スで崩し、ブライアン・バグナスのブロックで仕留めて連続ブレイク。やはり西田が本来のサーブを打ち込めば得点につながる。
フルセットの末に勝利を収めた試合後、サーブのギアを上げた理由を聞くと、西田はこう語った。
「自分たちはサーブを入れていくというシステムでやることが多いんですけど、僕がそれをやろうとした時に、やっぱり自分の中で、良さというものが消える部分が非常にあると思いますし、それが主になった時に、強みがなくなって、スパイクにも影響が出ていたので、そこの(入れていくという)概念を僕なりに取っ払ってやりました。それで一つ突破口が見えたのでよかったかなと思います」
その前週までの数字と昨季の数字を比べると、西田のサーブは失点が減っていたが、サーブポイントも激減しており、サーブ効果率は11.3%で全体の13位だった。
「SP(サーブポイント)は狙わなくていいと言われていたので。それはチームの方針だったので、それに沿ってやっていましたが、自分の中で全然フィットはしていなかった。今日からそこはシフトチェンジしてやっていければ」
そこからサーブの状態は上がっていった。レギュラーシーズンを終えて、効果率は12.9%、6位にまで上昇した。4月11日の日本製鉄堺ブレイザーズ戦の後、攻める姿勢にシフトしたサーブの手応えをこう語っていた。
「うまくいかないこともありますけど、それが『なんでこうなのか?』と考えるのは練習の場であって、試合で考えるべきではないと思っているので、(試合では)割り切って。しっかりそれができていることが、数値にも繋がっているのかなと思っています。比較的サムさん(トーマス・サムエルボヘッドコーチ)も選手のことを理解してやってくれるので、『こうしろああしろ』という、そういう硬いバレーではないかなと思います」

今季は大阪Bでキャプテンを務めている。西田はどんなキャプテンか、とリベロの山本智大に聞くと、こう答えた。
「もちろんキャプテンになって、チーム全体への発言権が増えた面もあるんですけど、どちらかというと彼は背中で引っ張るキャプテン。準備の面で非常にしっかりと、練習の何時間も前からストレッチをして、毎日同じルーティンでやっている。そういうところから、今季は1人1人の練習や試合に対する向き合い方というのも、非常に前向きになっています。結果はあとからついてくるもので、それまでの過程を大事にするキャプテンなので、そういう面もみんなの意識が変わって、チームにプラスに働いているんじゃないかなと感じています」
そしてやはり、得点を決めたあとの荒々しいパフォーマンスは、若い頃から変わらない西田の魅力であり武器だ。山本も言う。
「やっぱり決めた時のガッツポーズだったり、吠える姿が、チームに『やるんだ!』という気持ちをもたらしてくれていますし、そこが一番の彼の強み。チームが波に乗っていけるのも西田のそういった行動にかかっているので。だからサーブいっぱい決めてほしいです(笑)」
昨季はレギュラーシーズンで優勝したが、セミファイナルでSTINGS愛知に2連敗してファイナルには届かなかった。今季、西田は開幕前から、「シーズン終盤でしっかり完成したチームを作って、勝つ」と、最後に勝つイメージを描いていた。その勝負の舞台が、いよいよ幕を開ける。




