「ここでサービスエース取りそうだな」
試合を見ていてそう感じた時、ウルフドッグス名古屋のアウトサイドヒッター・水町泰杜は、高い確率でその通りにサービスエースを奪ってしまう。
SVリーグ・クォーターファイナル、対広島サンダーズ第1戦の第3セットもそうだった。
第1、2セットは、レギュラーシーズンより明らかにギアが上がり集中力、組織力が高まっていたWD名古屋が、硬さが見えミスが目立った広島THを圧倒したが、インターバルを挟んだ第3セットは広島THも武器のサーブやブロックで得点を重ね接戦に持ち込んだ。セットを取り返せば広島THが息を吹き返すのは必至。WD名古屋としてはなんとしてもこのセットで試合を終わらせたいところだ。
その第3セット21-21の場面で、水町にサーブが回ってきた。
エンドラインのレフト側から対角線のコースに勢いよく打ち込んだサーブは、広島THのリベロ・高木啓士郎とアウトサイドヒッター・柳北悠李のちょうど真ん中を襲い、2人の腕を弾き飛ばしてスタンドへ消えていった。

水町のサーブを警戒し、広島THはオポジットのフェリペ・モレイラ・ロケもサーブレシーブ陣の右端に加わり、4枚で備えていた。となれば、サーブレシーブが不慣れなロケは狙い目となる。現にそのセット中盤に宮浦健人がロケを狙って崩し、ブレイクに繋げていた。だが水町は逆のコースに豪快に打ち込んだ。試合後、その場面をこう振り返った。
「あの時はロケ選手が4枚目に入っていると、藤田(和広チームディレクター)さんに言われていましたけど、自分の得意コースが5番(相手コートの後衛レフト)だったので、まずは自分の得意なところに打つというところだけを意識して、いつも通り打ちました」
水町のサービスエースで22-21と逆転したWD名古屋は、掴んだ流れを手放さず、最後はミドルブロッカ―・佐藤駿一郎のブロックで競り合いを制し、セットカウント3-0で勝利した。
学生時代から、水町のそんなシーンは幾度も目にしてきた。「勝負強い」「持っている」がもう代名詞のようになっているが、今更ながら改めて聞いてみた。「ああいう勝負所に強いのはどうしてですか?」と。
すると、「うーん」と少し考えて、こう答えた。
「やっぱり負けちゃいけない場面とか、ここ一番の時に、(自分が)打てないと負けるチームにいたっていうのは……ちょっと変な言い方になるかもしれないですけど、常にそういう状況でやってきたので、特に緊張とかもしないですし。『ああいう場面こそ自分が点を取る』というところは、高校生の時にしっかり教えてもらえたので、それが生きているのかなと思います」
鎮西高校では、1年生の時に、当時3年だったエースの鍬田憲伸(サントリーサンバ―ズ大阪)と対角を組み、鎮西初の春高優勝を成し遂げた。鍬田の卒業後は、2年生の水町がエースだけでなくキャプテンも任された。
水町が2年生になったばかりの4〜5月に行われた黒鷲旗で、鎮西高はVリーグ(現SVリーグ)のサントリー、JT(現広島サンダーズ)と筑波大学を相手に、見せ場は作ったもののセットを奪うことができず3連敗した。どこもカテゴリーが上のチームだが、それでも敗戦に納得せず、すべてを背負って2年生エースはこう語っていた。
「悔しいです。1セットでも取れたら、もっとみんなにも自信をつけられたのに。ダメなエースなので、まずそこを変えないと。人を変えるより、自分が変わったほうが早いので。自分が崩れたらチームが崩れると思って、丁寧にやらないといけないと反省しています。1年の時みたいに、思い切りやるだけではダメなので。
去年までだったら、こういう時も『あー楽しかった!』で終わっていると思う。でも今の自分の立場は、それで終わったらダメ。去年みたいなキャラが自分の本来のキャラなので、本当は超キツイんですけど(苦笑)。去年は憲伸さんがいたから自分は楽しんでやるだけでよかったんですけど、今は憲伸さんの立場なので、自分だけのことだけで終わっちゃダメだから」
エースバレーの鎮西高では、勝負所で必ず水町にトスが上がってきた。それだけでなく常にサーブでも狙われる。その中でずっと勝敗を背負い続けたからこそ、勝負強さと勝敗に対する責任感が水町には当たり前に染み付いている。
広島THとのクォーターファイナル第2戦はフルセットにもつれる激戦となったが、WD名古屋は第5セット10-13から逆転。最後は水町のブロックで締めくくり、2連勝でセミファイナル進出を決めた。
セミファイナルの相手は昨季と同じサントリー。昨季は1勝2敗で惜しくもファイナルに届かなかったが、今季は勝負所をものにし、天皇杯に続くファイナル進出を果たせるか。間違いなく水町は鍵を握る一人だ。




