[写真]=兼子愼一郎

 それはプライドを感じさせるサービスエースだった。2025-26 大同生命SVリーグのチャンピオンシップ ファイナル、5月15日(金)のGAME1は第4セット、23-21の場面からリリーフサーバーとして投入されたサントリーサンバーズ大阪の髙橋塁が鋭い打球を放つ。相手の大阪ブルテオン、ミゲル・ロペスを強襲した一撃は得点となり、チームも勝利へぐっと近づいた。

 その前日、会場練習から髙橋は好感触を覚えていた。舞台となった横浜アリーナ(神奈川)について聞いてみる。

 「めっちゃ良かったです。いつもプレーしているAsueアリーナ大阪(大阪)よりも観客席の奥行きが広い印象でしたが、ここにお客さんが入ればどんな雰囲気になるのか、とても楽しみです。個人的には、いいフィーリングで練習できたので」

 明かすに、1年前は異なった。同じチャンピオンシップのファイナル。有明アリーナ(東京)で行われたGAME1はジェイテクトSTINGS愛知と3時間半に及ぶ壮絶な試合を繰り広げ、一日空いたGAME2は舞台をLaLa arena TOKYO-BAY(千葉)に移し、その両日で髙橋はリリーフサーバーとして起用されている。チームは初代SVリーグ王者に輝いたが、その一方で髙橋は不完全燃焼に終わっていた。

 「ファイナルは会場の盛り上がりが、僕も経験したことがないほどでしたから。ジェイテクトはファンの応援もすごくて、イケイケなムードを作り上げていました。その雰囲気に圧倒されて、何もできなかったという。もうちょっとできたな…それが昨シーズンのファイナルでした」

 そこからの1年間、髙橋はリリーフサーバーとしての役割をまっとうすべく、自らに成長を課し続けた。スキルはもちろん、メンタルの運び方にも変化を加えている。

 「どんな状況でも最高の準備をすること、ですね。試合ではまず、各セットで10点を超えたあたりから相手のマッチアップを踏まえて、『自分だったらサーブはここに打つな』『こういう攻め方をしたいな』というイメージを持ちます。同時にアップゾーンで体を温めて、試合の流れを見て、サーブは攻めるのか、それとも戦術的に入れるのか、を詰めていきます。

 あとはトスを上げてから、最終的に判断します。それまでプレーしていて体が温まっていたら、どんなトスでもある程度は攻めて打つことはできるのですが、リリーフサーバーの場合はその1本しかありませんから。トスによって、すべてが決まってしまいます。仮にトスがずれたら、入れにいくサーブへシフトする必要があります」

[写真]=坂口功将

 アップゾーンから試合を眺めながら、リリーフサーバーとして体勢を整えていく。「準備して、準備して、結局呼ばれなかったり」することもあれば、反対に「このセットは出番が無さそうだな、と思っていたら呼ばれる」こともある。

 ましてやチームには“甲斐キャノン”こと甲斐孝太郎が、同じリリーフサーバーとして控えている。「僕たち2人の起用方法は、2、3年やっていてもわからなくて…」と苦笑いを浮かべる髙橋だが、「僕はどちらといえば安定したサーブでブレイクを取りにいく、甲斐はその一本に懸けるタイプです」とお互いにサーブの種類が異なり、監督がどちらかを選ぶことに意図や狙いがあることは承知の上。だからこそ、いつだって準備を怠らないのだ。

 ただ、甲斐が送り込まれることにジレンマを抱かないといえば嘘になる。

 「セミファイナルのGAME2は各セットの終盤で甲斐選手が起用されたんですね。なかには22-22というシチュエーションもあって、ああいう場面こそ自分が出たかった。点差が離れた状況よりも、競り合ったり、劣勢の場面でブレイクすれば、たとえ1点でも2点分くらいの重みがありますから。緊張する場面でしっかりと自分のサーブを打つ、その自信はあります」

 リリーフサーバーとしての矜持がそこにあった。

 いざファイナルを迎え、「絶対に各セットの後半、20点台に入ってからの“いい場面”で自分に出番が必ず回ってくるはず。前日練習のフィーリングだと、おそらく緊張せずにサーブを打てると思います」と意気込んでいた髙橋。そうして実際に訪れた“いい場面”が、冒頭のシチュエーションだった。

 そのGAME1を紐解くと、髙橋は4セットすべてでリリーフサーバーとして送り込まれている。第1セットは24-23、第2セットは21-21と想像どおり各セットの終盤だった。

 「緊張しすぎることなく、僕の中でもサーブを打つ前から『いけるな』という自信はありました。第1セットはどちらかといえばミスをしないことにフォーカスをして、結果的に第2セットもブレイクはできませんでしたが、いいサーブを打てていたんです」

 だが、24-15と大きくリードした場面でエンドラインに立った第3セットは、それまで手応えを感じていた分、「気の緩みが出てしまった」とサーブをネットにかけている。それでもチームはそのセットを獲得したが、コートチェンジの最中、髙橋は関田誠大に声をかけられた。「もう次に切り替えて」と。

 「関田さんは、僕がいいサーブを打ったときも、逆に悪いサーブであっても、割とポジティブな声かけをしてくれるんです。ミスしても『次、次』と言ってくれるので、そこはとても助けられています」

 そうして続く第4セットではミスを引きずることなく、「やってやるんだ!!」の一心でサービスエースという最高の結果を叩き出す。試合後、取材陣の前に現れた髙橋は「おいいしいところをいただけた、という感じですかね」と目尻を下げたのであった。

 積み上げた自信をプレーに昇華させた今回のファイナル。1年前に味わった悔しさを果たすべく研鑽を積み、「リリーフサーバーは監督からの信頼がなければいけない役割。やりがいを感じていましたし、試合に出るという意味ではそのポジションを確立できました」と髙橋は胸を張る。

 だが同時に、拭えない悔しさやもどかしさが生まれていたのも事実だ。ファイナルではエースアタッカーの一角を担うデアルマス アラインがコンディション不良のため欠場を余儀なくされた。髙橋は同じポジションでありながら、その代役として起用されることはなかった。準優勝で終えた2025-26シーズンの最後に、明かした胸の内はこうだ。

[写真]=須田康暉

 「監督の中で、アウトサイドヒッターとしての自分への信頼度はまだまだ十分ではないのは自覚しています。シーズン中も『この場面でも自分はサイドアタッカーとして使ってもらえないんだ」と悔しい気持ちになる場面がありましたから。一方でリリーフサーバーとしての信頼度は間違いなく、この1年で高まったと実感しています。悔しさと嬉しさ、半分半分でしょうか」

 サントリーサンバーズ大阪、背番号「21」。髙橋塁、ポジションはアウトサイドヒッター。ここからは次なる、己のプライドと向き合う戦いが始まる。

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この記事を書いたのは

坂口功将

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