現在男子のアジア選手権が開催されている北九州市立総合体育館で、9月4、6日の2日間、SVリーグ男子の選手有志による「令和8年熊本地震 災害支援金募金活動」が行われ、大勢の観客が募金に協力した。中には「(観戦ではなく)このために来ました!」というファンもいた。
発起人は東京グレートベアーズに所属する柳田将洋だ。
現役選手ながら日本バレーボール協会(JVA)理事を務め、JVAアスリート委員会委員長、国際バレーボール連盟アスリート委員にも名を連ねる34歳。
以前から、「選手主導で、社会のために何かできないか」という思いを抱いていたという。8月8日に開催された大阪ブルテオン・清水邦広さんの引退試合にゲストとして参加した際、会場で会ったSVリーグ関係者と話す中で、7月に起きた熊本地震の復興支援のための募金活動を行う案が持ち上がり、柳田が実現に向けて動き出した。
全チームの、親交のある選手に連絡を取り、その選手からチーム内に呼びかけてもらい参加者を募った。SVリーグが選手の交通費など活動資金をサポートし、その予算を踏まえて参加人数や移動経路などを調整した。スケジュールなどの都合で参加できなかったチームもあるが、最終的に9チームから16人の選手が参加した。

「こうやって参加してくれる選手がいたので、正直ホッとしています。ゼロベースから始めたので、0から1にするのは非常にエネルギーがいることですが、それが一つカタチになったことはよかった」と、日本戦の中継の解説と募金活動で大忙しだった6日を終えて、柳田はようやく一息ついた。
「募金をしてくださるファンの方と、顔を合わせてお礼を言ったり、熊本から来られた方からお礼の言葉をいただいたり。実際にそういう声を聞くと、本当にプロ選手として、もちろんバレーボールで結果を出すことも大事なんですけど、その他に社会的な影響をどうやって与えていくか、自分たちがそこの居場所をどうやって見つけていくかということも非常に重要だなと感じました」
大学生の頃から柳田と親しく、サントリーサンバーズ時代に共にプレーしたジェイテクトSTINGS愛知の藤中謙也は、柳田から連絡を受け、活動に賛同。今季からチームメイトになった弟の優斗と共に募金活動に参加した。
「以前から柳田さんには、『選手が主体となって動けるような場があったらいいね』という話はしてもらっていて、僕としては『積極的に協力させてください』と伝えていました。プロ化が進んでいき、より大きな団体になるにつれて、選手の意識も高めていかないといけないと思っているので、このタイミングでその一歩を踏み出せたことはよかったと思います。日本代表戦の会場ではあったんですけど、SVリーグのことを知ってくださっている方も多くいました。今回は柳田さんに任せっきりだったんですけど、1人にお願いするんじゃなく、僕だったり、他の選手がもっと積極的にこういう活動に参加し、大きくしていかないといけないなと感じています」

今回集まった927,541円の支援金は、日本財団の「災害復興支援特別基金」への寄付を通じて、被災地の支援に役立てられる。
柳田は、「動いてみて気づいたことも多い」と話す。
「選手主導と言いつつも、SVリーグやスポンサーの方々、選手をここまで送り出してくれたクラブ、今回なら募金をしてくださったファンの方など、いろいろな方々に支えてもらっているということを改めて感じました。もちろんわかっていたんですけど、選手が何か行動を起こす時に、選手だけで完結することはないんだなと。ただ、こういうことを実績として、“社会のために何ができるか”を考える癖を、これから選手自身が身につけていけるといいかなと思います。今回の活動をしっかりと踏まえた上で、じゃあ次にどんなことができるのか、次の展望を考える。その繰り返しです」
その先に、柳田が見据えるのは“選手会”の発足だ。
「これが単発で終わるのではなく、中長期的にいろんな活動を繰り返すことが、おそらく選手会ができた時のゴールの一つになる。(他の競技の)いくつかの選手会の話も聞いていますが、バレー界はバレー界なりの選手会を作っていければ。もちろんSVリーグと対立するわけではなくて、足並みを揃えてさらにいいリーグにしていくために発足できるといいのかなと思っています。ただ、自分が現役を辞めちゃったらもう、選手会にはいられないので、現役のうちには、カタチにしたいなと思います」
明確な覚悟がうかがえる。これほどバレー界のことを考え、実際に行動に移している選手はいない。だからこそ多くの選手がついていく。
「現役のうちに」。それが何年も続いてほしいと願いつつ、早く目標を果たせることを期待せずにいられない。




