この男がいると会場の温度がぐんぐん上がっていく。チームメートだけでなく、観客をも巻き込んで空気を変えていく力が、男子日本代表のミドルブロッカー・西本圭吾にはある。
ロサンゼルスオリンピック予選を兼ねた大舞台でも見事に流れを変えてみせた。2026男子アジア選手権の予選ラウンド初戦、日本はオマーンを相手に快調に2セットを連取するも、第3セットを20-25で落としてしまう。嫌なムードが漂いかけたそのとき、第4セットの立ち上がりから投入されたのが、188センチのミドルブロッカーだった。
序盤にブロックポイントを奪うと「ウォォォ!!!!」と叫びながら、観客にもっと声を出せと言わんばかりに左胸を力強くたたく。その気迫はオマーンがたまらずタイムアウトを取るほど。スパイクを決めた場面では、鬼のような形相で吠え、しかもキャプテンの石川祐希に迫るように吠える姿に、場内のボルテージが一気に高まった。西本の発するエネルギーが会場全体に波及し、流れを取り戻した日本は第4セットを奪って初戦をものにした。
雄叫びやガッツポーズでチームを鼓舞する姿は、今や西本の代名詞だ。そんなスタイルの原点は大学時代にある。「元々明るい性格ですし、高校でバレーを始めたときも元気だけはあったんです。でも大学に入って、ミドルブロッカーが3ローテしかないなかで印象を残すにはどうしたらいいかを考えたとき、技術以外の部分で印象を残さないと生き残っていけないなと」
生き残るために始めた自己表現は、いつしかプレースタイルの一部になり、今では日本代表に勢いをもたらしている。西本は今大会の役割を「やっぱりゲームチェンジャーの立ち位置かなと思ってます」と語る。「(今のチームは)経験のある選手が多いので、安定したゲーム運びができる一方で、相手のアグレッシブさに一歩引くじゃないですけど、受けてしまうところがある。でも僕はいい意味で経験値が低いので、アグレッシブにやってきた国に対して、それを上回るアグレッシブさでゲームを変えるところを求められてると思ってます」
日本代表に初めて選ばれたのは2024年。A代表での活動は2025年からと、代表経験はまだ浅い。だが、本人はその経験の浅さをむしろ強みとして捉えている。「『知りすぎていない』は強いと思うんです。何事においても、いろんな情報が入ってくると迷いが生じやすい。だから僕は、経験値がないことをいい意味で捉えています」
大舞台だからといって余計なことを考えたり、必要以上に慎重になったりすることもない。ただ目の前の相手に思いっきりぶつかっていける。それが今の西本の強みだ。「もちろん、経験値がないことでスタートから出れない部分はありますけど、それは時間で解決していくしかない。今は自分が持っている力を出すことしかできないので、いい意味で『知らない』っていうのが、僕の強みだと思います」
今回のアジア選手権は日本にとって対戦経験の少ない国が多く、相手の実力を測りにくい。しかも、オリンピックの出場権をかけた戦いとあって、各国が普段以上の力を発揮してきてもおかしくはない。決勝ラウンドに進めば、苦しい展開を強いられる場面も出てくるだろう。そんなとき、西本のアグレッシブなプレーがきっと試合の流れを変えてくれる。吠えて、吠えて、吠えまくる。強気のゲームチェンジャーがコートに火をつける。




