“新生”という印象が強く残ったサントリーサンバーズ大阪の開幕節だった。
10月24日にホームで開幕を迎えたサントリーの開幕スタメンのうち、昨シーズンの開幕戦で先発のコートに立っていた選手は0。サントリーは昨季まで8シーズンチームを支えたドミトリー・ムセルスキーが現役を引退し、キャプテンを務めた髙橋藍とリベロの小川智大がポーランドリーグのルブリンに移籍。今季は新たに4人の外国人選手と、リベロ備一真の加入が6月に発表されていた。それに加え、新キャプテンの小野寺太志が左膝蓋大腿関節軟骨損傷、セッターの関田誠大もコンディションを考慮してベンチから外れたため、メンバーがガラリと変わり“新生サントリー”の印象が際立つ開幕戦となった。
その中でも、数カ月前まではそのコートに立っていることを想像すらしていなかったのが、セッターの中野倭である。
中野は近畿大学卒業後、ウルフドッグス名古屋に入団したが、出場機会に恵まれず、2024年に韓国リーグの韓国電力 Kepco vixtormに移籍。昨季はポーランドリーグのバルコム・カジャーニで、元ドイツ代表セッターのルーカス・カンパと共にプレーした。
しかし、今季は所属先が決まらず、現役を続けることを諦めかけていた。
「今シーズンに向けて契約をうまく勝ち取れない中で、キャリアのフィニッシュも含めていろいろ考える時期がありました。日本でやることを最優先に考えて探していたんですけど、その中でなかなかオファーをいただけないという事実に直面し、自分に自信をなくしていました。実家に帰って、ぐーたらじゃないですけど、数カ月バレーボールから離れていた。血迷っていました(苦笑)。そんな時にサントリーから練習生としてオファーをいただいて、そこで生き返ったという感じですね。バレーボールへの熱が」
サントリーは関田のコンディションが万全でなく、下川諒は日本代表のB代表で活動していたため、夏場セッターが不足していた。そこで中野に白羽の矢が立ち、8月27日、練習メンバーとしてチームに合流することが発表された。
9月に行われた日本製鉄堺ブレイザーズとのプレシーズンマッチでは、新加入のオポジット、ワシム・ベンタラとの息のあった高速コンビを披露するなど、チームに加わってまだまもないとは思えないパフォーマンスを発揮していた。
「ライトのトスはもともと得意ですし、ああいう軌道のトスは、高さは違いますけど、アンダーカテゴリーの時から続けてきたことなので」
そして10月1日、サントリーとの本契約を勝ち取り、イタリア遠征を経て、開幕スタメンを掴んだ。
「バレーから離れていた時期に、家族や、他にもいろいろな方々に助けてもらったので、そういう方々に対しては感謝しかありません。そのおかげで今シーズン、今のところこうやって出られているので、恩返しという気持ちが一番強いですね」
ヴォレアス北海道と対戦した開幕戦は、コンビを合わせてきたベンタラがメディカル面の問題で不在となり、中野は「頼りにしていたので、僕にとっては結構アクシデントでした」と振り返ったが、代わって先発した甲斐孝太郎が堅実なプレーやサーブ、ディフェンスで持ち味を発揮。新加入のアウトサイドヒッター、ダニエル・チチゴイが29得点と爆発し、セットカウント3-1で勝利した。
第2戦は1、2セットを連取されるが、昨季ヴォレアスにレンタル移籍していたアウトサイドヒッター染野輝が第3セットから出場して流れを変え、フルセットに持ち込む。第5セットは相手のマッチポイントで、リリーフサーバーの髙橋塁がサービスエースを決めてデュースに持ち込むなど粘ったが、マッチポイントをものにできず、2-3で敗れた。
2連戦を終えた中野からは、悔しさと手応えの両方が伝わってきた。
「開幕戦ということもあって、2試合とも入りが硬く、難しい展開が多かったというのが反省点でした。でもそういうことはわかった上で挑んでいたので。その中でも昨日は勝ちに繋げられたし、今日は2セットダウンからフルセットに持ち込むことができたというのは、さっきチームの中でも話していましたが、自信になります。2セットダウンからでもやれるんだという前例ができた。それは良かった点かなと思います」
昨季まで(Vリーグ時代も含め)6年連続ファイナル進出という栄光を築き上げてきたサントリーは今季、心機一転、新たなスタートを切った。その中に、再びコートに導かれた中野がいる。




