[写真]=Volleyball World

 コートに入る瞬間、男子日本代表セッター河東祐大の心に楽しみな気持ちが湧いてきた。ロサンゼルスオリンピックの出場権が懸かる大舞台、しかもA代表として初めて臨む公式戦。もちろん緊張もあったが、「嫌な緊張ではなくて、ワクワクのほうの緊張でした」とA代表デビューを楽しんだ。

 2026男子アジア選手権の予選ラウンド初戦、河東は第2セット途中に二枚替えで投入された。「みんなが声をかけてくれました。『祐大、いくぞ』って。トモさん(山本智大)は背中を叩いてくれて、(石川)祐希さんは笑顔で迎えてくれた」とチームメートの声に背中を押され、早速思い切ったプレーを見せる。髙橋藍のレシーブを受けた河東は「パスがすごく良かったので、打ちやすいトスを意識して、ミドルに引っ掛けてパイプを選択しました」と相手ブロックを引きつけ、精度の高いトスを上げる。そこへ飛び込んだ髙橋が強烈なバックアタックを打ち込んだ。

 得点が決まると、河東はガッツポーズを見せ、周りの選手たちもうれしそうに駆け寄った。中でも、山本が一際大きな喜びを見せていたのは、後輩の緊張をほぐす意図があったようだ。日本体育大学の3年先輩にあたる山本からすると、河東の「顔がちょっと硬かった」らしく、「緊張を和らげるためにタッチしたり、雰囲気を盛り上げたりしていました」とさりげなく気を配っていたという。「ポテンシャルが非常にある選手で、それをいかに発揮できるかが大事になってくると思ったので、そういうアクションを取りました」

 ファーストプレーでの得点と先輩のサポートで緊張が解けたセッターは、安定したトスワークで攻撃を組み立てていく。最後はワンハンドトスから小野寺太志のクイックを引き出し、第2セットを締めくくった。

 大事な初戦できっちりと役割を果たした河東は、「センター線やパイプを使った攻撃は自分の強みなので、そこが通ったことはすごく自信にもなりました」と手応えを口にする。二枚替えでの出番については「難しく、厳しい状況のなかで出ることは覚悟している」と受け止め、「どのスパイカーともしっかりコンビを合わせて、いい状態で打たせるのが自分の使命」と語る。

 その使命を果たすためには、スパイカーとの連係をさらに深めていく必要がある。河東は6月から8月にかけて開催されたネーションズリーグ中はB代表に帯同しており、A代表に合流したのは8月中旬の国内合宿から。初めて合わせる選手が多く、この日の試合も「レフトのスパイカー陣との細かい高さやスピードが、個人的には少し合ってなかった」と振り返った。

 限られた時間のなかで、どこまで理想のコンビネーションに近づけられるか。本来、人見知りな性格で自分から話しかけるタイプではないが、「バレーボールはやっぱりコミュニケーションが大事なので、自分から積極的にいこうと思っています」と、スパイカーとの呼吸を合わせるためにコミュニケーションを重ねていくつもりだ。

 優勝すればロス五輪出場が決まる大会ということもあって、プレッシャーも期待も感じている。そんな舞台に立っていることが「本当にうれしい」と、河東は言う。その表情からは、今を心から楽しんでいることが伝わってくる。「ここから勝ち上がって、最後の決勝で、自分が引っ張る気持ちでプレーできるように、自分自身も成長してチームの勝利に貢献したい」。日本代表に欠かせない存在になるための歩みが、ここから始まる。

取材・文=高尾太恵子

この記事を書いたのは

VOLLEYBALL KING 編集部

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