銀メダルを獲得したアジア大会をもって、今年のバレーボール男子日本代表の活動は終了した。ネーションズリーグ、アジア選手権、アジア大会すべてに出場した大塚達宣、西本圭吾にとっては特に長い代表シーズンだった。だが、アジア大会決勝から24時間も経っていない10月4日夜、大塚は3シーズン目となるイタリア・セリエAのミラノへと旅立った。
出国前、空港で取材に応じた大塚はこう語った。
「チームはもう合宿やプレシーズンマッチというところに入っていくので、なるべく早く合流したいというのがあって。ミラノも本当に大切なので。やっぱりミラノでも勝ちたいという気持ちがすごく強い。でも、自分が(アジア大会の)コートでプレーする経験というのも必要だと思ったので。欲張りっちゃ欲張りなんですけど(笑)。それができるのも今しかないと思っていますから」
ネーションズリーグとアジア選手権を戦ったフル代表では、アウトサイドヒッターには石川祐希と髙橋藍が固定され、大塚や富田将馬は試合途中から劣勢の流れを変えたり、リリーフサーバーとしてブレイクに繋げる役割だった。大塚はそこで確実に仕事を果たし、幾度も勝利に繋げたが、選手である以上、長く試合に出場したいと思うのは当然のこと。
アジア大会前に日本代表のロラン・ティリ監督からは、「フルでコートに立ってプレーする時間をあげたい」という話をされていた。
「自分もそれはずっと求めていたものだったので、それをしっかりこの大会でやりたいと、お互いの意見が一致したというか」
プレーだけでなく、若手選手が多いアジア大会のチームでは、まとめ、引っ張る存在として期待されていることもわかっていた。
「そこは自発的なもの。このメンバーでアジア大会を戦うとなった時から、自分がコートに立って、引っ張っていかないといけないだろうなと思っていました」
7日間に6試合というハードな大会で全試合に先発出場し、リーダーとしても存在感を発揮した。特に最後の5、6試合目、準決勝・中国戦、決勝・イラン戦ではひときわ強い光を放った。
「やっぱり僕の中では、中国やイランと試合をする時にフルでコートに立つことは、非常に価値があることだと思っていたので、その2チームと対戦したいなという思いは正直大会前からありました。でも、そういうネーションズリーグにも出ているような相手に、自分がどこまでできるのかという不安も、ゼロではなかった。みんなそうだと思うんですけど。普段(A代表で)あまりコートに入っていないメンバーなので、通用するのかなとか、みんないろいろと思うところはあったかもしれない。でも自分はこうやるんだと決めてコートに立ったらもう、それを信じて、みんながしっかりできていた。
中国戦、イラン戦は自分の中で一つギアが上がりました。6試合あって、一番しんどい5日目6日目のところで、強い相手に対してどれだけやれるか。1試合だけいいというよりは、大会を通して、最後まで走り抜けられるようなプレーをしたいなというのがあって、それが最後の2試合はできたほうかなと思っています。中国、イランに対してもああやって競った試合になって、競って勝った試合、競って負けた試合、両方経験できたことはよかった。そういう相手に対してしっかり勝負できたことはチームとしてよかったし、自信になりました」
イラン戦の第4セットは、一時6点差をつけられたが、大塚がサービスエースを奪ったり、次々にスパイクを決めてブレイクを重ね24-24と食らいついた。
「4セット目は中盤、相手に走られてしまって。あのまま終わっていたら、逆に(敗戦後)あそこまで悔しくなかったかもしれないですけど、最後の1点まで諦めず、全員で出し切った結果だったと思う。同じ負けでも、試合の展開や点差によって、諦めムードというか、完全燃焼しきれないまま終わる負け方もあるとは思うので、そうじゃなく、点差は離れたけど、そこから全員で『もう一回頑張ろう』って、ギアを上げてやれたことはチームとしてよかったと思います」
今年はアジア選手権で優勝し、2年後のロサンゼルス五輪の切符を獲得した。だが、ここから「ロスを見据えて」という感覚はないと大塚は言う。
「毎日の積み重ねの結果、2年後にどうなっているか、というだけなので。とにかくミラノで勝ちにいくことが自分をさらにステップアップさせることになるだろうし、そういうことの繰り返しだと思っています。オリンピックの出場権は確かに取りましたけど、だからと言って成長の手を止める必要はまったくないし、休む必要もないんじゃないかと思っています」
その一日一日の積み重ねが、どれほど大きな力になっているかを見せつけたアジア大会。「人生が豊かになった」と語っていたミラノで、今季も日々、着実に積み上げる。




