試合後のミックスゾーン、勝っても負けても、たいてい一番先に引き上げてくるのが西川馨太郎だ。コートで闘う時と同じく、表情は変えぬまま、冷静に試合を振り返り、的確にポイントを突く。無口なように見えて実は饒舌だ。
7日間で6試合を戦うアジア大会。予選リーグの3連戦を終え、準々決勝のカタール戦は1時間3分で快勝を収めた。攻守も噛み合い、全員がコートに立つ展開となったが、その状況でも自身はどんな役割を全うしようとしていたのか。答えは明確だった。
「攻撃に関しては、相手がサイドの攻撃に対して簡単にマークさせないように、自分が常に真ん中から入ること。そうすれば(相手は)マークを外せないので動きにくくなるし、チーム全体の攻撃力も上がるので、そのための立ち回りをする。ディフェンス面に関しては、B代表でやってきた選手に守備のいい(大塚)達宣も入ったので、ブロックで跳ぶところを明確にして後ろが拾いやすくなるように。(高橋)和幸さんとの連携も、最初はなかなかうまくいかなかったんですけど、試合を重ねる中でかなり上がるようになってきたと思います」
自身の役割だけでなく、チームとして何を目指すか。32年ぶりに自国開催のアジア競技大会という1つの大会で終わるのではなく、この結果、経験をいかにこの先へつなげるか。
求める結果は1つだけ。西川の言葉に迷いはなかった。
「(指揮を執るロラン・)ティリさんからすれば今回はA代表に招集されていないメンバーも試せる機会。選手からすればアピールするチャンスですけど、僕の考え方としては、だからこそ勝つことに意味がある。このメンバーでアジア大会を勝った、しかも(対戦国は)アジア選手権に出場したガチメンのチームも多い中で勝つことができたら、僕らの自信にもなるし、一番のアピールになる。数年経った時、『あの時のアジア大会で優勝したメンバーだ』という実績があれば、ティリさんも使いやすくなるし、選びやすくなると思うから、負けてもいい理由はひとつもない。勝ちに行きます」
準決勝の中国戦、決勝のイラン戦でも有言実行とばかりに、随所で西川の活躍が光った。
これ以上離されると厳しい、という劣勢時にはブロックで、さらに点を獲って勢いに乗りたいとことではラリー中もトスを呼び、さまざまな場所から決める。「勝ちに行く」という大会で、準決勝はフルセットで勝利したが、決勝は1対3で敗れ、目指した頂点には届かなかった。
セレモニーを終えた後、選手たちはミックスゾーンで取材に応じる。最終日も、それまでと同様に誰より早くミックスゾーンに現れたのが西川だった。
7日で6試合、ハードな日程でのアジア大会を終えて。準優勝という結果も含め、どう捉えているか。悔しさを抱えながらも「やるべきことはやった」と明るい表情を浮かべる選手もいる中で、いつも通り表情は変わらず、ただ、少し早口で語った。
「勝てる試合だったと思うんですよね。でも、まだまだチームが若かった。たとえば、相手がイランじゃなければ出ないミスもすごく多くて、そういうのを見ていると、まだイランという名前に身構えてしまっているんだな、と。そういうミスをA代表で活躍している選手は絶対にしないし、僕たちに必要なのはそういうところ。どんな状況でも、思考が凝縮されたプレーを繰り返して、実践しなきゃいけない。若いチームだからこその勢いがあるのはいいところかもしれないけれど、その勢いがなくなってしまった時にどうやったら取り戻せるのか。ゲームメイクも含めて、どうして勝てなかったのかを各々が考えて、今後につなげていくべきだと思いました」
かつてはアジアのライバルとして、何度もイランに大一番で敗れた経験がある。対戦する前から名前に負けていた時代もあったが、今は違う。男子バレー日本代表がアジアで勝つのも当たり前になり、五輪予選を兼ねたアジア選手権ではプレッシャーにも打ち克ち、イランとの決勝を制してロサンゼルス五輪出場権を決めた。
イランも、同じ日本代表の選手たちも見上げるのではなく同じ目線で、その場で戦うために、勝つために、何が足りないのか。大きな課題を突き付けられたからこそ、西川は誓う。
「今回の銀メダルをいい結果にできるかどうかは、これからの僕たちの過ごし方になってくると思うので、これをちゃんと糧にして、いい経験にできるように。これから頑張ります」
次は何を語るのか。間もなく始まるSVリーグで、新たな楽しみが増えた。




